今回、PINK′S ROOMというページをいただきまして、何を書いていいのか迷ってしまいまし
た。独自の視点でアルバムを解説するなどという器用なことはできませんし、何よりも文章を書くのは
苦手なものですからちょっと困ってしまったんですが、ここはひとつ苦し紛れに記憶の薄れないうちに
5年前にアメリカで見たFLOYDのライブ・リポートという形で書かせていただきたいと思います。何を
今ごろ・・・と言われそうですが、その後がありませんので、一応これは最新(?)ライブ・リポートとい
うことになります。ではでは、まずはプロローグから・・・
1999.05.03 by PINK
  


 

 

 
 

 
     
 

   
           
   
 
【第一話】 プロローグ
   1994年2月20日、「CDジャーナル」3月号のCBSソニーの広告を見て私は歓喜しました。「神話
復活 PINK FLOYD」 たったこれだけの記事でしたが「おお、あの偉大なるFLOYDがついに動き
出した!」と思い、私は単純に嬉しくなってしまいました。それからというものは本屋さん行ってはあら
ゆる音楽雑誌、オーディオ雑誌のアーティスト・ニュースなどを読みあさり、大体次のことがわかりま
した。

「PINK FLOYDのニューアルバムは日本では4月上旬発売予定」
「新作の邦題は『対(TSUI)』となるもよう」
「3月30日からマイアミを皮切りに北米ツァーがスタートする」
「2月にローズボウルで記者会見をしたFLOYDによると今回のショーは『ステージと観客席をイマジ
ネーションで一体化する究極のライブ』(D・ギルモア)になるという」
「コンサート史上、初めてゴールドレーザーが使用される」
「全米ツァー300万枚のチケットはギネス級のスピードで即日完売」
「大型トラック43台分のステージセットは組み上げるのに120人のスタッフで3日を要する大がかり
なものになるらしい」
「ピンク・フロイドは現在米軍基地でリハーサル中だが、ショーの内容がどのようなものになるのか一
切あきらかにされていない」等など・・・

 私はこれらの記事を読むたびに「う〜ん、これはすごいことになりそうだ」と思いながらも、その反面
「これはちょっと良くないなぁ・・・」とも感じました。いろんな記事を見れば見るほど「これは、日本には
来そうもなあ〜い!!」というのがわかってきたからです。

 「来日は未定」などという記事もありましたが、私は絶対来ない!と思いました。それにはそれなり
の理由があるのですが長くなってしまうので省略します。日本に来ないというのがわかると、あとはも
う海賊版ビデオに期待するしかありません。まだアルバムも出ない、ツァーも始まらないというのに早
くも海賊版が出るのを待ちつづける毎日となりました。

 そんな4月初めのある日、1年以上も音信が途絶えていたアメリカの友人から、一通のPINK FL
OYDの絵はがきが届きました。それには次のように書いてありました。「すでにご存知のようにPINK
 FLOYDがニュー・アルバムをリリースし、ツァーを開始しました。私の住んでいるIndianapolisにも
来ることになったのでチケットも買いました。どうしますか?」

 「どうしますか?」って、いくらFLOYDが好きでもコンサートはアメリカでやる訳ですから、普通に考
えたらそんなハガキよこしませんね。しかし、出す方も普通じゃなければそれを受け取った方も普通
じゃないんですね、これが。困ったことに・・・ 

 私はそれを見て3分もしないうちに001をダイヤルしてましたねぇ。あとのことなど考えず・・・まぁ、
むこうは朝早い時間だったのでつながりませんでしたけどね。それからは電話と手紙を何度かやりと
りしまして、ついにアメリカまでFLOYDを見に行くことになっちゃいました。ちょっと余興が過ぎるかな
とも思いましたが、めったにないチャンスだしこれを見逃したら次はいつになるかわかりませんから
ね。日程は6月14日。それまでの2ヶ月がどんなに待ち遠しかったことか・・・そのへんのこといちい
ち書いていたら本が一冊書けてしまうので省略しまして、話しはいきなり6月14日のことになります。

 1994年6月14日。アメリカ、インディアナ州、インディアナポリス。Hoosier Dome、5:00PM。
アメリカで初めて見るPINK FLOYDのショーの開始まであとわずか。これから始まるたった3時間
だけのために、バカになるような費用をかけてわざわざ極東の島国からやって来た私に、一体FLO
YDは何を見せてくれるのであろうか?

 
 
     
 
 
【第二話】 開演前の風景
   コンサート当日の街中の様子というのは、雑誌で読んだロスみたいに町全体がFLOYDが来るのを
歓迎しているというような感じではありませんが、ここインディアナポリスでも交差点にある電光掲示
板はFLOYDのニュースを伝え、FMからはFLOYDの曲が流れ、そのへん歩いてる人もFLOYDのT
シャツを着ていたりして、それなりに盛り上がっておりました。

 コンサート会場であるHoosier Domeには5時半ころ来たんですが、いくつもある入り口にはどこ
も長蛇の列ができていました。私は8ミリビデオかこの日のために買った録音できるウォークマンの
どちらかを持ってきたかったのですが、「入り口で預けたらもう戻ってこないと思ったほうがいいよ」
と、友達に言われていたので持ってきませんでした。見れば入り口には、元プロボクサーのような係
員みたいのがいてボディチェックをしておりました。

 6時開場で中に入ったのですが、あまりにも広いのでびっくりしてしまいました。ここは普段はアメリ
カンフットボールなんかやってるみたいですが、ホントに広い!しかし、もっとびっくりしたのは、その
ステージセットの巨大なことです。幅30メートル以上はあるようなドーム型のセットを見ただけで圧倒
されてしまいました。でも、どっかへんなんですね。たしかにデカイんですけどただデカイだけでなんか
シンプルなんですよ、セットが・・・ストーンズやU2のような「どうだマイッタか!」というようなものもの
しいセットではなくて、ホントに無機質でシンプル・・・最初見たときは、どうしてこんなセット組むのに1
20人で3日もかかるんだあ、と思いましたよ。

 会場内を見渡しますと、7時頃はまだ観客は6〜7分の入りで年齢層はやっぱり高いですね。それ
にどう見ても男のほうが多い。他のバンドのライブのように若い女の子が5〜6人でグループで来て
見ました、というのはまずおりません。やっぱり見に来るのはオヤジが多いです。普段、コンサートに
は来ないような60〜70年代の元ヒッピーだったような連中もFLOYDのライブとなると山から下りてく
るようです。

 Hoosier  Domeというのは、その名の通り、まぁ東京ドームのようなところなんですが、みんなタ
バコを吸っているので私もちょっと一服と火をつけようとしたら、友達が「ここ禁煙ですよ」なんて言う
んですね。「みんな吸ってるけど・・・」と言ったら「あれ、マリファナですよ」なんて言われて、またびっく
りしてしまいました。タバコはだめだけどマリファナだったらいいのかしらねぇ・・・

 まぁ昔からFLOYDの曲はドラッグミュージックなどといわれておりまして、FLOYD聴きながらクスリ
やるといい気分でトリップできるんだそうでありますよ。アメリカではいまでもそういう聴き方してる人
がいっぱいいるみたいです。さて、7時半頃になりまして、まさかここはいっぱいにならないだろうと思
っていた会場はいつのまにか満席になっておりました。あとで聞いたら6万人入っていると言ってまし
た。88年に武道館でやった時はかなり空席がありましたからねぇ。名古屋なんか当日券でアリーナ
の前から10列目が買えちゃったくらいで、どうして日本では人気がないんでしょうか?これはUFOや
ネッシー以上の謎で、世界の七不思議にもう一つ加えて世界の八不思議にするべきだと思います。

 まぁ、そんなことはどうでもいいとして、開演時間が近づきますと「うオォ〜〜〜ッ」というなんともい
えない歓声があがりまして、それが歓声のウェーブになって会場内を一周するんですね。それが5分
おきくらいに起こりまして、よくライブを見に来る友達も「こういう異様な雰囲気は初めてだ」と、言って
おりました。開演時間の8時になってもトーゼンのごとくショーは始まりません。そうしますと歓声のウ
ェーブがさらに大きくなりまして、アメリカ在住の友達でさえ「すごいなぁ・・・」と、驚いておりました。

 私たちの席はステージの真横に近いところなので、立ち見でもいいから全体が見えるところまで移
動したかったんですが、あまりの迫力にちょっと怖くなって友達の横を動けませんでした。8時10分
を過ぎた頃になってなにやらスピーカーから音が流れてきました。小鳥のさえずり、川の流れる音、
セスナ機の爆音・・・こういった自然音、効果音でまず会場内の空気を自分達のものにしてしまう、そ
ういう空間を作り上げてしまうというのはFLOYDの常套手段ですね。雷が鳴って雨が降ってくる・・・
そして、雨が上がった音が消えた後の8時20分、客電がおちて大歓声ひときわ高くなり、いよいよシ
ョーのスタートとなりました。 

 
 
     
 
 
【第三話】 第一部 パート1
   1988年の日本公演以来6年振りに、そしてアメリカでは初めて見るPINK FLOYDの最新ライブは ASTRONOMY DOMINE で幕を開けた。こちらに来る前に読んだ音楽雑誌のライブリポートでオープニングはこの曲らしいというのはわかっていたが、1967年、D・ギルモアが在籍していなかったデビュ−アルバムの一曲目に収められた ASTORONOMY DOMINE が、まさか現在のFLOYDのライブのオープニング・ナンバーになろうとは思ってもいませんでした。

 イントロの信号音にギターの音がかぶさるとステージには大小いくつもの地球の映像が映し出され、左から右へ流れて行く。なんと、ステージセット全体がスクリーンになってしまうのである。そして強烈なドラムの音が入ると60年代後半をほうふつさせるブルーのサイケデリックな絵模様に変わっていく・・・もう、あのドラムを聴いただけでKOされてしまった私は、握りこぶしをつくって思わず両手を高々と上げてしまいました。

 2曲目は LEARNING TO FLY。私はこの曲が大好きでありまして、いまだに1日3回は聴かないと気がすまない曲です。とくにライブバージョンが好きで、その日によって微妙に違うところをいろいろなブートCDで聴き比べています。私にとってこの曲は毎日使うタオルやハブラシと同じ生活必需品のような曲になっております。ま、そんなことはどうでもいいとして、2コーラス終わって間奏になったところで全開になったレーザー光線にはあ然として「あぁ〜・・・」と、口を開いたまんまでした。ビデオで見ても相当なものですが実物はまぁとんでもないものです。光量がハンパじゃないです。私は他のライブは見たことないので知りませんが、いろいろ見ている友達も「これはすごいっ」と言ってました。音のほうはどうかと言いますと、三人のバッキング・ボーカルのミニスカートの腰の振り方が気になって、よく覚えておりません。すみません。

 3曲目は新作『THE DIVISION BELL』から WHAT DO YOU WANT です。これはブルージィーって言うんですかね、ま、そんなふうな曲です。この曲もいいんですけど、どうしても耳よりもその照明のほうに目がいってしまいますね。音のほうはなんかスゴイ音だったということくらいしか覚えてないんですねぇ、正直なところ・・・88年に見たときよりも数段スケールアップして進歩したそのライティングに、ホントに口が開いたっきりでしたからねぇ。3曲やっただけでなんか普通のコンサートのハイライト分くらいは見てしまったという感じで、この先どうするんだろうと思ったら、そのままのペースでずーっと続いていくんですね。どの曲もアンコールでやるような演出で・・・ちょっとひねくれたヒョーロンカなどは「これはロックのライブというより生演奏付きのライトショーだ」なんて言うくらいですから、FLOYD知らない人でも照明見てるだけで十分楽しめちゃいますね。

 4曲目は ON THE TURNINGAWAY です。これはちょっと細かいことでどうでもいいことなんですが、今回のショーでもステージ前面に少し傾斜して、電光掲示板にもなるムービンクライト(っていうのかな?)が設置してあります。前回はライトが280個でこれが全部点いたのはショーの終盤、最後から2曲目の時でしたが、今回はライトの数も600個になり早くも4曲目で全開という出し惜しみをしない演出となっております。「ライトの数が多ければいいってもんじゃないでしょう」という声はこのさい無視して話を進めていきます。さて、ON THE TURNINGAWAY ですが、これも私の大好きな曲です。ステージ全体に流れるように放射される七色のバリライトが美しい・・・この映像をプライベート・ビデオでしか見られないのは本当に残念です。しかし、演奏自体は前回のショーのほうがよかったですね。この曲は後半のギター・ソロがとくにライブでは素晴らしいのですが、最初の部分で音がさがってしまうのがちょっとよくなかったです。前回同様ここは音を上げたほうが盛り上がります。う〜ん、知らない人は何言ってるのかわからないと思いますが、文章では説明しずらいそういうフレーズがあるんですけど・・・まぁ、なんといってもこの曲はビデオクリップにもなった87年のアトランタでの演奏が最高ですね。「うん、そうそう」って、何人の人がうなづいてくれたかなぁ・・・。

 ここまで4曲終わったところで観客の反応はどうかといいますと、これがまた、みんな熱狂はしているんですが、テレビやビデオなんかで見るほかのバンドのライブとはぜんぜん違うんですね。まず全員総立ちというものがありません。何を勘違いしたのかたまにアリーナのほうで立ち上がる者もおりますが、うしろのほうから「見えねえぞ」なんて文句言われて(多分・・・)すぐに座ってしまいます。あと手拍子がない。ま、ノリのいい曲ではないのでとうぜんといえばトーゼンですが。手拍子がないくらいだからこれまた当然のごとく右手こぶし突き上げというものもございません。一応これはロック・コンサートだと思うんですが、「総立ち」「手拍子」「右手こぶし突き上げ」というオーディエンスの「三種の神器」がないのがFLOYDのコンサートなんですね。それでいながらうまく説明できないほど会場内は盛り上がっているという、なんとも異様な雰囲気の中で4曲目の ON THE TURNINGAWAY は終わりました。

 
 
     
 
 
【第四話】 第一部 パート2
   泣く子も感動するPINK FLOYD今世紀最後(?)のライブ、5曲目は新作アルバムから TAKE IT BACK です。これは前作『鬱』の ONE SLIP と似たようなわりとテンポのいい曲なので、これをアンコ−ルでやるのではないかと思っておりました。  しかし、この曲でのバリライト攻撃は相当なものでありまして、私は横でみていたのでそうでもなかったけど真正面で見てる人はかなり目にきたのではないかと思います。このバリライトとコンサート史上、初めて使われるゴールド・レーザーについては、国や州によってはその使用禁止または事前に届出が必要なんていう話もあったくらいですから、その威力は相当なものです。ポケモン見て気分が悪くなるような人はFLOYDのライブは見られないですね。

6曲目は SORROW。今回のショーは一部では最近のニ作品からの選曲が中心になっているようです。昔はアルバム単位のコンサートでしたがこれも時の流れでしょうか。なんたって80年代以降オリジナル・アルバムは3枚しか出していませんからねぇ。オリンピックでさえ5回、来年で6回やる間にナント!アルバム3枚!!本格的なワールド・ツァーとなると2回。ナント!10年に1回!!まったくファンとしては欲求不満になってしまう困ったバンドです。2〜3年に1回はキチッとアルバム出して、そのたんび来日コンサートやってくれるアーティストのファンって本当に幸せですねぇ。

 ところで SORROW ですが、これはイントロのギターの重低音がすごい曲です。武道館でやった時は建物全体がびびっていたのを今でも覚えております。私、こういうの大好きです。後半のギター・ソロは圧巻ですね。この時の照明も素晴らしいです。曲に合わせて見事にシンクロするバリライトの動きというのは当然コンピューターなんか使ってやってると思うんですが、どげなぐあいにやっとるんでしょうか。私は感心してしまいました。

 単純に照明の数だけなんていうんではストーンズなんかのほうが多いと思うんですが、その曲に合わせた使い方ということになるとFLOYDの右に出るバンドというのはいないのではないでしょうか。よく見るとバリライトとレーザー光線だけなんですが、それだけでああいう演出ができるというのは私のような単細胞にはスゴイ!としかいいようがありません。余談ではありますが、これに比べると88年のショーがすごく地味に見えてしまいます。そんなんでも当時の日本の雑誌などは「史上最大のショー」なんて書いておったのですが、来日公演ではさらに縮小されておりました。武道館で一部が終わった後の休憩時間にロビーで、多分FLOYDをよく知らない人だと思うんですが「なんだよ、すごいのは照明だけじゃん」「ああ、照明はすごいな」なんていう立ち話をしておりましたが、曲は良くなかった(知らなかった)けど、あの時のチャチな照明でもすごいと思ったんですね。つまり、何が言いたいのかというと、あの時より数段グレード・アップした今回のショーはそれほどスゴイ!!!と「!」マークいっぱいつけてカタカナで絶賛してしまうほど本当にスゴイというのが言いたかったんですが、どうも乏しい表現力で書いているものですから読んでる人にうまく伝えられなくて申し訳ないと思っております。

 と、まぁそんなわけで次は7曲目になりますが POLES APART です。新作からのナンバーですが、はっきり言ってこの曲はあまり良くないです。FLOYDらしからぬ退屈な曲でなんか息抜きに作ったようで、いくらFLOYDでも良くないものは良くないとはっきり言っちゃいます。この曲の時は日替わりで新作からの他の曲もやっているらしいので、私としては COMING BACK TO LIFEを聴きたかったです。さいわいなことに COMING BACK TO LIFE は『 pulse 』にも収録されておりますがこの曲はライブよりもオリジナル・バージョンのほうが好きです。さて、第一部もあと2曲となりまして、8曲目は KEEP TALKING です。なんかよく知らないけどスティ−ブン・ホーキング博士が関与しているらしいこの曲では、ステージ前面のムービング・ライトが電光掲示板にもなり、そこに映し出されるさまざまな幾何学模様は、はるか宇宙の異星人にメッセージを送っているようにも思えます。ステージに投射されるブルーのライトでアーティストを浮き上がらせながら、ドラマチックに展開していく大曲は実に見ごたえ、聴き応えがあります。そして、一部も次が最後の曲となりました。

 PINK FLOYD、究極のライブ・ステージ第一部のしめくくりは、その曲名、バンド名は知らなくても誰でも一度は聴いたことのある名曲 ONE OF THESE DAYS です。わけもなく人を興奮させるベースの音で始まるこの曲は1971年の作品ですが、これはもう時の流れを越えて永遠に輝いています。88年に武道館で聴いた時は、生のベースの音があんなにすごいとは思いませんでした。ここでベースに合わせて本日のライブ、初めて手拍子が入りました。しかし、その曲もさることながら数々のライブを見ている渋谷陽一もびっくりしたという、あのヤケクソのようなバリライトの全面攻撃は、もう圧巻です。色を変え、角度を変え、まるで生き物のように動き回るのを見ていると「あれ、よくこわれないなぁ」と、驚きを通り越して感心してしまいます。

 曲の後半では、火がボンッ!と上がるんですが、これは決してオーバーではなく20メートルくらい離れていても熱さを感じました。ステージとアリーナ席の間にスタッフが何人か立っているんですが、ジャンパーに落ちた火の粉をあわててはらっている者もおりました。しかし、こういうことを言うと叱られそうですが、他のどーでもいいバンドのライブを評して「空前のスケール」とか「度肝を抜くステージ」なんていう表現は軽軽しく使わないでいただきたいと言いたいです。それに、どう見ても「ひと山いくら」のバンドを「超大物」なんて呼ぶのもやめていただきたいですね。ま、日本に来るとみんな大物になっちゃいますけどねぇ・・・生でFLOYD見るとつくづくそう思っちゃいます。みなさんごめんなさい。

 ところで、お約束の例のブタは、ステージの両脇に建てられたタワーのてっぺんがやはりドーム型になっておりまして、今回はそこから上半身を乗り出すようなかっこうで暴れていました。私の席からはドーム内で二人のスタッフがロープを引っ張ってブタを操っているのが見えまして、思わず笑ってしまいました。ブタは二頭いましてそれぞれ「シド」「ロジャー」と呼ばれていたそうであります。ここはドームなんですが、野外だったら多分、月からも見えたであろう照明の中、最後はブタが転落死して第一部は終了しました。

 このショーをビデオでしか見られない日本のファンは、本当にかわいそうです。今回のショーは一回の費用が5000万円とか言っておりましたが、その半分は電気代のような気もします。そういえば88年に来日した時エレクトロニクスを駆使した ON THE RUN という曲をやらなかったのは、許可された電力使用量を越えてしまうからだとどこかの雑誌に載っておりました。ま、いずれにしてもここまで巨大化したショーはホールではとても無理ですね。たとえ来日して東京ド−ムでやったとしても、いろいろと制限されてアメリカと同じようにはできないでしょう。だから「ま、 日本はいいか」なんつって来ないんだよねぇ。くやしい〜〜!

ここで15分の休憩があったんですが、私この間の記憶がないんですよ。頭ん中真っ白になって、きっとボーゼンとしていたんですね。

 
 
     
 
 
【第五話】 第二部 パート1
   さて、第二部のオープニングは "CRAZY DIAMOND" です。乳白色の朝もやの中から聞こえてくるようなシンセサイザーのイントロが始まると、バンドのうしろから円形スクリーンがゆっくりとせり上がってきます。前回のように最初からバーンと出てるんではなく、曲に合わせて出てくるというところがこれまたいいですね。さて、その円形スクリーンですが、これがまた実に巨大でありまして、直径10メートルくらいありましてその周りにもバリライトがびっしりと取り付けられており、それ自体が照明装置にもなってます。ひと口に10メートルといいますが、こういうところで見る10メートルは相当な大きさです。ちなみに前回のツァー時は6メートルくらいで、日本公演の時は4〜5メートルくらいでした。

 FLOYDは昔からこの円形スクリーンを使用していましたが、今回は新しいフィルムが多数使われておりました。CRAZY DIAMOND の映像は子供が成長していく短編映画のようなもので、曲とはなんの関係もないのですが不思議と曲にハマってしまうんですね。しかし、他のバンドのように自分達の演奏している姿を映し出すというヤボなことはいたしません。CRAZY DIAMOND は実に長いイントロで8分もたってからやっと歌が入るという曲でありまして、これはちょっとカラオケには向きませんね。シンセサイザーの重低音がハラにひびきます。4分あたりからのギターはもう最高なんですが、なぜか前回も今回も Part 4 の後半1分20秒ほどがカットされ演奏されていないんですね。これは一体どうしたわけなんでしょうか?私はここのフレーズが大好きなんですけどねぇ。それにしても、これは名曲です。オリジナルで一番好きな曲はどれかと言われたら、これになりますね。でも、ライブでこの曲をやりたがってるのはギルモアだけで、他のメンバーはみんな反対しているらしいです。

 第二部2曲目は『THE DARK SIDE OF THE MOON 』から "BREATHE IN THE AIR" です。これはまぁ重要の曲かも知れませんが私にとってはべつに良くもなければ悪くもない曲で、ショーの演出にしても特にどうということもないです。そして、待ってましたの3曲目は・・・

 見る者を圧倒する空前のスケールで展開していくショーの第二部3曲目は言うまでもないけど言ってしまう名盤中の名盤『THE DARK SIDE OF THE MOON / 狂気 』から"TIME"です。この曲も私が勝手に選んだべスト5に入るくらい大好きな曲でありまして、車でブートCDなど聴いていてこの曲になるとリピートにして、くり返しくり返し一日中ずーっと聴いているということがよくあります。昔からFLOYDのファンには「病気の人が多い」(渋谷陽一)と、言われておりましたが、私に言わせればこれは病気でもパラノイアでもなく、これがごく普通のことであります。でも"TIME"は歌詞を読むとなんか自分のことを歌われているような気がして、フクザツな気持ちになってしまう曲でもあります。

 と、まぁここでこの曲に対する私の思い入れなどほざいておりますと、それはそれは長くなってしまうので省略するといたしまして、さて"TIME"なんですが、まずあの時計の音が鳴った時の大歓声というものはすさまじいものでありました。"ONE OF THESE DAYS"の時もそうでしたが、一部で演奏されたわりと最近の曲の時よりも、やはり昔の曲をやる時のほうが観客の反応はいいですね。すでにそこにはR・ウォーターズはおりませんが、そこにPINK FLOYDと名乗るバンドがいてPINK FLOYDの曲を演奏している、私なんかもそうですがそれだけでもうみんなうれしいんですね。これは余計なことでうまく言えませんが、FLOYDの音楽を作ったのは確かにR・ウォーターズですが、それをうまく表現したのはD・ギルモアのギターではないかと思うんです。いまだに「ロジャーのいないFLOYDなんて・・・」という人もおりますが、今、目の前にいるのはまぎれもないPINK FLOYDです。

 と、いうわけで"TIME"ですが、昔からこの曲をやる時は円形スクリーンに時計のアニメーション映像を映していたのですが、今回からコンピューター・グラフィック映像に新装開店いたしました。さまざまな時計やその内部などを表した映像は、そのへんちょっと詳しい友達も「これ、けっこう金かかってますよ」と、言ってました。私はこの映像が映し出されている間のイントロ2分間の、あのタイコの音が大好きです。歌はサビの部分よりも歌い出しのところのほうがいいです。しかし、なんといっても一番シビレちゃうのは間奏のギタ−です。こんなかっこいいギター・フレーズがあったなんて当時、南沙織などを聴いていた私は少しも知りませんでした。

 24年間私を啓蒙しつづけるTIMEをこれからも、死ぬまで聴きつづけることになると思います。余談ではありますが、北米公演はだいたい今日と同じようなセットリストでしたが、終盤のデトロイトとNYでは『狂気』完全版をやったらしいです。これは評判が良かったらしくヨーロッパ公演では数多く演奏され「アメリカはヨーロッパ公演のリハーサル地だった」という話もあったらしいです。きっとアメリカのファンは怒っていたのではないかと思います。私としてはこのショーを見て、これはおそらく元が取れないので翌年もアメリカでまたセカンド・ツァ−をやるものだとばかり思っていました。その時は『狂気』完全版が見られると思い会社クビ覚悟で「来年は1ヶ月休みをとって来るから、キャンピング・カー借りて追っかけやりたい」と、友達にも言っておいたんですけどねぇ・・・"ON THE RUN"でのあの飛行機、見たいですよねぇ・・・

 他のメンバーはまだやる気があって、年明けにはギリシャ、イスラエル公演が予定されていたらしいん ですが、ギルモアの奥さんが妊娠しちゃって子供ができるので、ギルモアがキャンセルしちゃったらしいです。バカヤロー!なんでピル飲んでねえぃんだあ〜〜!!

 「ああ、もう一度見たい、聴きたい」という思いも空しく「時は過ぎ行き歌もいつしか終わりを迎える、もっといいたいことがあったはずなのに・・・」と、歌いながら"TIME"は終わってしまいました。

次にこの曲を目の前で聴くのにはあと何年待たなければならないのでしょうか・・・

 
 
     
 
 
【第六話】 第二部 パート2
   TIME は時計の音で始まりましたが、4曲目の "HIGH HOPES" は印象的な鐘の音で始まります。新作からただ1曲だけ二部で演奏されたのは円形スクリーンに映像を映すからですね。この映像はビデオ・クリップにもなったものですが、このMTV全盛の時代にFLOYDはあまりビデオ・クリップを作らないんですね。作ってはいるんですがほとんど宣伝の役目をはたしておりません。日本のテレビ局が放送しないんでしょうか。前回のツァーの時の "ON THE TURNING AWAY" のビデオ・クリップは最高にすばらしいんですがビデオ・クリップ集なんかもまず出しませんね。出せば売れると思うんだけど・・・

 さて、"HIGH HOPES" ですが、これは知らない人が聴いたら「聴いて疲れる音楽、精神的にぐったりしてしまう音楽」の代表格になってしまう曲ではないでしょうか。おまけにビデオであの意味不明な魔可不思議な映像なんか見せられたら「なんじゃ、こりゃ?」とか言われて「E・クラプトンとかないの?」なんて言われるのがオチですね。

 "HIGH HOPSE" だけではありませんが、たしかにFLOYDの曲というのは「美しいメロディ」「軽快なリズム」「さわやかなハーモニー」といった、音楽に必要な三要素がいちじるしく欠けていると思うんです。少々乱暴に言ってしまいますと、全部ではありませんがそこにはただ「重〜い音」があるだけです。しかし、この重さこそFLOYDではないかと思います。オートバイにたとえれば他のバンドがドゥカティ、BMWだったらFLOYDはハーレーでしょう。きっとFLOYD好きな人は欧州車よりもハ−レーに乗ってますね。え、どうしてそんなことが言えるのかって?それは私がそうだからです。もっともFLOYD聴くよりハーレー買うほうが早かったですけどね。

 ま、そんなことはどうでもいいとして、"HIGH HOPES" は久々にドラなどを持ち出してドラマチックに盛り上がっていく大作です。ライブで聴いてもオリジナルと大差ありません。すでに完成されてしまった楽曲なので、ライブだからといってへんにアドリブなど入れるとかえってぶちこわしになってしまいます。よってFLOYDのライブはオリジナルを忠実に再現するということになっているようです。このへん「だからFLOYDのライブはつまらない」と言う人もおりますが、そういう人達に対してギルモアは「オレ達のやってることが気に入らなかったらレコードは買ってくれなくてけっこう。ライブにも来てくれなくていいのさ」なんてカンタンに言ってます。また、次のようにも言ってます。「ライブでは見に来る人が聴きたい曲よりも、自分たちのやりたい曲を演奏している」「オレ達が成功するかどうかはレコードとライブのチケットを買う人の手にゆだねられている」そして、その結果はというと、もう言うまでもないと思います。またまた話がそれてしまいましたが "HIGH HOPES" などを聴いておりますと「ああ、まだこういう音楽をやってるバンドがいたか」なんて安心してしまいます。

 5曲目は『狂気』から "THE GREAT GIG IN THE SKY" です。「虚空のスキャット」という邦題のつけられたこの曲は、三人のバック・ボーカルのネーチャンの独壇場です。この曲は88年の日本公演の時 "ON THE RUN" ができなかったので替わりにセット・リストに加えられた曲ですが、その後評判が良かったらしく、ライブでは必ず演奏されています。

 でも、私はこの曲はあまり好きではありません。だってこれ、人前ではボリューム上げて聴けないですからねぇ。「FLOYDは大音量!」だと思っている私も、この曲の時はボリューム下げます。オウム騒動の時、「一日中コンテナの中に閉じ込められて、女の悲鳴の入った音楽を聴かされていた」なんていう話がありましたが、もしかしてそれはこの曲だったのではないでしょうか?

 6曲目は『炎』から "WISH YOU WERE HERE" です。アコースティック・ギター2台のかけあいで始まるこの曲に対するアメリカのファンの思い入れというのは相当なものがありますね。これ読んでくれているみなさんはご存知だと思いますが、なんと、この曲ではギルモアの歌に合わせて観客の合唱が入ります。FLOYDの曲が合唱になるとは思わなかったけど、すごいですねぇ6万人の大合唱は。みんな本当にこの曲が好きなんですね。

 たしかにこれは人によっては涙なくしては聴けないというくらいいい曲なんですが、ライブで曲の途中にギルモアがスキャットのようなものを入れるんですが、私はこれはちょっと余計だったような気がします。オリジナルは本当にいい曲なんですが、これがちょっと・・・・・ですね。

 それにしてもここまで15曲、2時間以上やってるんですが、他のバンドのライブと決定的に違うところは、手拍子、全員総立ちというものがほとんどないところです。メンバー紹介もなければ、アーティストもほとんど動きません。チャラチャラした衣装どころか、ジーンズにTシャツ着て客をあおりもせずにたんたんと演奏している・・・一体みなさんは信じられますかねぇ。6万人もの人間が集まって異様な熱気に包まれながら、奇声こそあがるもののなんの騒ぎも起きず、最前列で狂ったように跳ね回る親衛隊の姿も見えない不思議で奇妙なロック・コンサートを・・・・・

 
 
     
 
 
【第七話】 第二部 パート3
   ところで、このツァー記はホントはもっと早く終わるはずだったのですが、途中で話しがあっちこっち それてしまうのでなかなか終わらず、なんかNHKの大河ドラマのような大作になってしまいました。た いして読んでくれてる人もいないのにオレもよくやるよと、自分でも感心してしまいます。まぁここまで書いてある雑誌のライブ評というのもないと思うので話のタネくらいにはなるでしょう。

 それでショーのほうは第二部7曲目のUS AND THEMになりました。これはなんというかうまく解説できませんが、いい曲なんですけど何回も繰り返して聴くような曲ではないです。例によって円形スクリーンには、わかったようでよくわからない映像が映し出されるのですが、曲の雰囲気に合ったような映像で妙に納得してしまうのは私だけではないと思います。いまさら言うまでもないと思いますが、このツァー記は実際に私が見て感じたことを好き勝手に書かせていただいているものなので、その曲に対する解説などは極力省いて(まぁ、書けと言われてもそういうのは書けませんが・・・)どのようなショーであったかということだけを書いているつもりなんですが、なんかダラダラと長くなってしまって申し訳ないと思っております。

 と、まぁそんなわけで8曲目はMONEYです。ここでも新しい映像が使われましたがお遊びのような映像で、イントロのレジスターがリズムを刻む音も無理に引き延ばされて私はあまり感心しませんでした。でも、四方に置かれたスピーカーの間を音が飛び交うのはよかったです。こういうのはビデオではわからないのが残念です。『狂気』完全版の時はオリジナルに近い演奏と昔の映像に戻されていましたが、やはりこちらのほうがいいです。MONEYの中盤では各自がソロをとる場面もありますが、FLOYDのライブにこういうのは必要ないと思っているのは私だけでしょうか・・・

 さてさて、第二部も残すところあと2曲となりまして、ラス前9曲目は私の一番大好きなアルバムの『THE WALL』からANOTHER BRIC IN THE WALL Part 2 です。ヘリコプターの飛んで来る音で始まるこの曲ではPart 1 の一部をイントロに使い、レーザー光線の大盤振る舞いでまず観客を沸かせます。ここで本日のショーでは観客がやっと全員立ち上がりました。その立ち上がり方がいかにも「待ってました!」という感じで、もうこの曲はライブではやらないわけにはいかないですね。ツァー当初は第二部の中盤で演奏しておりましたが、やはりこの曲は終盤でやったほうがいっそう盛り上がります。

 歌に入るとまたまたバリライト攻撃が始まり、ホントによく球切れたりこわれたりしないなぁと感心するばかりです。FLOYDの曲というのは後半にギター・ソロが入るというのがけっこうありまして、この曲もそうなんですが、ギター・ソロの時に円形スクリーンとステージ全体に映し出されるバリライトの七色の絵模様はまるで万華鏡の世界を見ているようでありました。FLOYDは昔から「音と光の魔術師」などといわれておりましたが、まったくその通りでその音楽に合わせて見事にシンクロする大仕掛けな照明は、すべてのギターの弦、キーボードのキーがコンピューターにつながっているのではないかと思っちゃいます。

 これはもう、とても他のお子様ロック・バンドのおよぶ領域ではございません。最初にステージ・セットを見た時は「なんでこんなの組むのに3日もかかるんだぁ」と思いましたが、まぁ見てびっくり、これじゃしょうがないです。なんでも聞くところによりますと、次の公演先のショーに間に合わせるように同じセットを三つ作ったそうでありますよ。インディアナポリスでショーをやってる間に次のアイオワとデンバーではもうセットを組んでいる最中らしいです。なんともスケールのでかい話しで日本のような島国など最初から眼中にないという感じです。金さえかければなんでもできるさ、というバンド、ジャーナリストもおりますが誰もやろうとはしませんね。失敗したら大赤字になってしまいますからねぇ、U2のように・・。

 唯一この手のライブで対抗馬をあげるとすればストーンズでしょうが、そのストーンズがFLOYDのために(公式には申しておりませんが・・・)チケットの値段を安くしたというのは、日本ではあまり知られていない話です。チャーリ−・ワッツも「FLOYDのライブは気になる」と正直に言ってます。「だから、どうした?」という人は相手にしないで話を進めます。

 と、まぁそんなことはどうでもいいとして、このANOTHER BRICK IN THE WALL Part 2 はFLOYDにしては珍しくシングル・ヒットしまして、その歌詞が「子供の教育上、非常によろしくない」などと言われ州や国によっては発売、放送禁止になったにもかかわらず、1位を記録しています。『THE WALL』は年間チャートでも1位になりましたがANOTHER BRICK IN THE WALL Part 2 は惜しくも2位でした。この時の1位はブロンディのCALL MEです。デボラ・ハリーのバカヤロ〜〜!

PINK FLOYD衝撃のスーパー・ライブもいよいよあと1曲を残すのみとなりました。目もくらむ閃光を放ちながら ANOTHER BRIC IN THE WALL Part 2 が終わった後D・ギルモアが「今日は来てくれてみんなありがとう」と、いうような挨拶をして、「次が最後の曲」と言うとみんなして「まだやめるな」、「もっとつづけろ」というように一斉にブーイングが起こります。

 「最後はCOMFORTABLY NUMB 」と曲紹介すると、これがどのような曲かみなさんよ〜く知ってますからそれだけで大歓声になります。照明が落ちて暗くなってもなかなか始まりませんが、みんな静かに曲が始まるのを待っています。ここが88年に日本でやった時と違うところですね。何も知らない日本のオーディエンスはなかなか曲が始まらないものですから手拍子であおるんですね。まぁ普通だったらこれで曲が始まると手拍子したまま待ってましたの全員総立ちに突入!ということになっていくと思うんですがそこがFLOYD、ちがうんですね。曲が始まったとたんに手拍子がピタッと止まってしまったのには「何も知らないバカめが!」と思い、笑ってしまいました。

 COMFORTABLY NUMB の重〜いイントロが始まった時の歓声はすさまじいものでありました。アメリカでの『狂気』『炎』『ザ・ウォール』の3枚に対する人気、ファンのこだわりというのは相当なものです。ビルボードには「トップ・ポップ・カタログ」というチャートがあるんですが『狂気』は四半世紀を過ぎた現在でもチャート・インしており、7月31日付でも14位で登場回数は1165週です。文字通りのケタ違いで2位にダブル・スコアの大差をつけて記録を更新しながら独走中です。では2位は何かというとこれがまた『ザ・ウォール』で500週を越えて20位前後でウロウロしてます。と、まぁこのような状況ですからライブでの盛り上がり方というのも、それはもう大変なものです。

 ライブだとよりいっそう重くなる歌と演奏で進んでいく COMFORTABLY NUMB の最大の見せ場はやはり後半のギター・ソロです。このギター・ソロに入る瞬間のフレーズなど何度聴いてもぞくぞくしてしまいます。曲に合わせて、それまで正面を向いていた円形スクリーンが徐々に倒れてきて平らになり、その強烈な光で真上からステージを照らすところなど圧巻です。演奏が進んで行くとアリーナ席中央の巨大昆虫のようなテントが開き、これまた実に巨大なミラー・ボ−ルが現れ上に向かってどんどん伸びていきます。どれくらい大きいかというと、まぁ八畳間くらいの大きさです。まだ照明が当たってないので前のほうで見てる観客はきがつきませんが、場内はもう大騒然としてきます。

 そして、ますます冴え渡るギルモアのギターと観客のテンションが頂点に達したクライマックス、突然ステージの照明が全部消えて真っ暗になった次の瞬間、四方八方からのライトがミラー・ボールめがけて放射されます。この時の大歓声・・・・・ドーム内全体が水玉模様なった美しいけれど異様な光景はとてもこの世のものを見ているとは思えないほどの感動で胸がジーンと熱くなってしまいました。う〜ん、この時の感じはビデオしか見たことない人には、いくら書いてもわかってもらえないだろうなぁ・・・

 ちょっと想像してみてくれませんか。真っ暗になった東京ドームの真ん中で巨大なミラー・ボールだけが回っているという光景を・・・たかがミラー・ボールですがFLOYDの手にかかるとそれがどれほど人に感動を与えるかはこの日一番の歓声が証明しています。「だから、FLOYDファンはバカなのだ」、「そんなことばかりして乏しい演奏力をカバーしてるのさ」と、言う人もおりますが、それで30年もやっていけるとはとても思えません。ミラー・ボールはこれまでのPINK FLOYDの歩みを表すように、時には振りかえるようにゆっくりと回り続けます。そして再びステージに照明が戻ると、ミラー・ボールは上下に花びらが開くように割れていき、さらにその中にも照明があって、それも回りながらよりいっそう強烈な光で観客を照らし出すという、「観客席とステージをイマジネーションで一体化する究極のライブ・パフォーマンス」(D・ギルモア)はここに最大のクライマックスを迎えました。

 曲が終わった後も興奮さめやらぬ観客の拍手はいつまでもドーム内に響いておりました。う〜ん、私は死ぬ時はこの曲を聴きながら、この時の光景を思い浮かべながら死にたい・・・・・

 
 
     
 
 
【第八話】 エンディング
  プログラム上、最後の曲である COMFORTABLY NUMB が終わり、会場内の照明がついてD・ギルモアがあいさつをしている間にミラー・ボールが下におりてくるんですが、明るいところでしみじみと見たらホントにでかいんでまたまたびっくりしてしまいました。あいさつを終えてメンバーがステージを下りたあとも、当然アンコールがありますから誰も帰りません。このアンコールを待つ間の「間」というものがなんとも言えませんね。
  再び照明がおちて、ステージの一番上で水平になっていた円形スクリーンがゆっくりと下りてきて、今回のショーのアンコール曲でもある HEY YOU が始まりました。この曲もじっくり聴くといい曲なんですが、ちょっとアンコールには向かないような気がしました。TAKE IT BACK あたりをもってきてハデにぶちかましてほしかったです。でも、しょうがないですね。「見に来る人が聴きたい曲よりも、自分達のやりたい曲を演奏する」(D・ギルモア)と、言うのですから。そして、それでもいいという人がアメリカには何百万人もいるのですから・・・

  夜も11時を過ぎた頃アンコール2曲目の RUN LIKE HELL が始まりました。これはノリがいいので唯一、手拍子、総立ち、右手こぶし突き上げ(知ってる人は頭上で両手でXを作り前後に振る)というオーディエンスの「三種の神器」の入る曲です。これは実にライブ映えのする曲で、その日によって違うフレーズになるイントロのギターが大好きです。

そして、そのラスト・ナンバーの演出はと言いますと、これはもう単純に「すごいっ!!」と、あきれてしまいます。すべての照明が全開となり、多分その上を飛んでいる飛行機からも見えたであろう出血大サービスのようなバリライトの七色全面一斉攻撃、ありったけのレーザー放射、ライティング・ロボットが激しく回転し、ムービング・ライトは右から左、左から右へと流れ、日本では到底不可能な高さ20メートルもある火柱が6本も吹き出し、ドーム内にもかかわらず花火が打ちあがり、あ然とするほど会場全体が発狂したような状態になったあげく、最後は円形スクリーンが爆発するというなんともすさまじいエンディングでありました。

  「なぜ、あんなに照明が必要なのか?」「なぜ、この曲がこういう演出になるのか?」なんていうチンケな批評批判などまるで受け付けない、誰も真似できない圧倒的な迫力は、あの酒井法子の台湾コンサート(おいおい・・・)をはるかに凌ぐ究極のライブ・パフォーマンスでありました。

  終わった後、手も上げずボーゼンとしている私に向かって友達が「どうでしたか?」と聞いてきましたが、どうもこうも、とても言葉になりません。本当に感動した時、人は何も言えなくなってしまうというのを、この時初めて知りました。

  みんなが帰り出してからも、最後までここに残っていたい、最後にここを出たいと思い席を動きませんでしたが、その思いも空しく友達に「帰りますよ」とうながされて、何度も何度もうしろを振りかえりながら Hoosier Dome をあとにしました。

 
 
     
 
 
【第九話】 再び…
   Hoosier Dome の帰りに車の中で友達が「いやあ、すごかったですねぇ」なんて言っておりましたが、本当にすごかったです。どれくらいすごかったかといっても、とうてい文章では伝えられるはずもなく、た だすごい、すごいと言うしかないのですが、それを少しでもわかるように書かせていただければ(オレ、ちょっとしつこいかなぁ?)そうですねぇ、映画館のスクリーンに『pulse』のビデオを映して見ればけっこう迫力伝わると思うんですが、それをさらに100倍(どれくらいだ?)パワーアップしたくらいですかね。

 世紀末の現在、これと同じショーをやってもいいから私はもう一度見てみたいです。いや、一度と言わず金さえあれば100回、1000回、できれば死ぬまでずーっと見ていたいです。私がビル・ゲイツだ ったらFLOYDの前に100億円くらい山積みして「あれと同じショーでいいから、もう一度やってく れ」ってお願いしちゃいますね。でも100億円くらいじゃFLOYDは動かないですかねぇ・・・それ じゃ1000億円!なんて「バッカじゃねえ?」っていうくらい話しは勝手にだんだんエスカレートして しまうんですが、ホントにあの最後の COMFORTABLY NUMB と RUN LIKE HELL、この2曲だけ見るために私はもう一度アメリカへ行ってもいいくらいすごいって、ホント〜にしつこくて申しわけないんですが、それくらいすごかったです。う〜ん、これで少しはわかってもらえたかなぁ・・・?

 日本からもあのショーを見に行った物好きが他にも必ずいると思うんですが、私はそういう人達の、評論家ではない人達の感想を聞いて、私だけが異常ではないというのを確かめてみたいです。誰かそういう人、これ見てくれてませんかねぇ・・・

 まぁ、確かにあのようなライブには批判的な見方をする人も当然のごとく存在します。しかし、「空前絶後」とか「今世紀最大」などというコトバはFLOYDのライブを表現する時以外使ってはいけないのではないか?というくらいの圧倒的スケールで展開していくあの迫力の前には、どんな批判もただのやっかみにしか聞こえないような気もします。

 FLOYDのライブを絶賛した評論家のあのI氏を「大げさすぎる」といってコテンパンにけなしたHPを見たことがありますが、それは間違いです。しかし、もっと間違っているのはFLOYD以外のライブでも同じように絶賛してしまうI氏ですから、まぁしょうがないですね。結局はその人の価値観の違いということになるんでしょうかねぇ。

 Hoosier Dome から友達の友達(関西の人)のアパートに行き、その後三人で食事に行ったのですが、その時の会話を次に再現してみます。Pは私、Iは友達、Yは友達の友達です。

Y「やあ、どうでしたか、今日のコンサートは?」
P「いやぁ、よかったです。わざわざ日本から来た甲斐がありました」
Y「そりゃあよかったですなぁ。ところでいつまでこっちにおるの?」
P「17日までです」
Y「ほう、あと3日もあるがな。あとはどちらのほうへ?」
P「ほんとは16日にアイオワでやる次のライブをみたいんだけど、ちょっと遠いというのであきらめました。あとはべつに行きたいところもないので、レコード屋さんと本屋さんにでも連れていってもらいます」
Y「(Iさんに向かって)アイオワ行かんの?」
I「遠いですよ」
Y「なんや、去年NYまで夜通し走ったことを思えばアイオワなんて近い近い。せっかくこうして日本から来てくれたんや、アイオワ行ってやらんかい」
I「でも、オレの車古いから・・・」
Y「レンタカー借りたらええ」
P「あ、それでしたら金はいくらでも出しますから、好きな車なに借りてもいいですよ」
I「もう1回見たい?」
P「うん、見たい見たい!」
I「う〜ん、それじゃ行きますか、アイオワ」
Y「よっしゃあ、決まりやあ」
P「うわあ〜〜やったー!」

 と、いうわけで、Yさんのおかげでもう1回FLOYDのライブが見られることになりました。うれしい〜〜〜!! (これから先は書くほうも読むほうも、さらにまどろっこしいというこれはまた別の意味で「マニア向け上級コース」となります。それでも「おお、ここまできたついでだ。読んでやろうじゃないか」という人だけついてきてください)

         ☆            ☆           ☆

まだまだ終わらない・・・ストップがかからないけどいいのかなぁ・・・  

 
 
     
 
 
【第十話】 アイオア
   6月15日、今日はOFFなのでインディアナポリスから100キロくらい南にあるブルーミントンというところへ Bootleg CDを買いに行きました。アメリカは著作権がうるさいらしく、海賊盤を売ってる店はあまりないみたいです。あまり大きな店ではなく、全体の数もそう多くはないんですがそれでもFLOYDは沢山置いてあり、あらためてアメリカでのFLOYDの人気の高さを知らされました。CDを$200くらい買ったら、一度にそんなに買う人はいないらしく、店のおじさんはすごく喜んでいました。正規盤CDはちゃんとしたレシートをよこすんですが、Bootleg のほうは手書きのレシートでした。

 私の友達はレコード店に行くたびに店の人に私のことを「彼はPINK FLOYDのライブを見るためにわざわざ日本からやって来た」なんて紹介してくれるんですが、だいたいみんな驚きますね。中には、いかにも「あきれた・・・」という表情をする人とか、「あなたの選択は正しい」なんて言う人もおりますが、今日来た店で「明日アイオワまでFLOYDを見に行く」と言ったら、ここからだともう1000キロくらいあるのでさすがにびっくりしておりました。

 それからまたインディアナポリスまで帰ってきて、一番最初に行ったFLOYDのTシャツを売ってる店にまた行ってみたんですが、なんと、めぼしいTシャツはみんな売り切れておりました。昨日のライブの日にみんなFLOYDのTシャツを着ていたので「う〜ん、もしかしたらコレハ・・・」と思っていたのですが、やっぱり最初にいっぱい買っておけばよかったです。コンサート会場には沢山売ってるんですが、Lサイズしかないので小柄な私には着られません。

 その後また三人で食事に行ったのですが、店によっては満席の場合は名前を書いて待っているという時があります。それで、関西のYさんという人が面白い人でテキトーな名前を書くんですね。たとえば、キン○マなんて発音するように書いて待ってるわけです。そうして順番が来ますとモデルのような青い眼をした金髪のオネエチャンに「Mr.Kintama comein please. 」なんて言わせて喜んでいるということをよくやってるようです。まともに書いたんでは違う発音になってしまうらしくて、なんかそのへんうまく書いてるみたいです。

 6月16日、朝7時に友達のアパートを出発、一路アイオワへ。まさか2回見られるとは思わなかったので朝からワクワクです。チケットはないけれどなんとかダフ屋から買えるだろうということです。インディアナからアイオワまでのハイウェイはどこまでもまっすぐで平坦で、よくこんな平らな土地ができたなぁと感心してしまいます。日本の高速道路みたいに渋滞がないので、途中休みながらでも4時にはコンサート会場のあるアイオワのエイメスというところへ着きました。まず最初に今晩泊まるところをさがしたのですがどこもいっぱいでした。周辺のモーテルは「WelcomeSteel Crew 」なんていうカンバンが出ておりまして、どうもFLOYDスタッフの貸切になっているようです。しょうがないので、コンサートを見たらそのままインディアナまで帰ることにしました。

 会場は Cyclone Stadium というアメフトをやるようなところで屋根なしです。会場の周りの空き地がすべて駐車場になっていて、もう半分くらいは車で埋まっていてあとからもゾクゾク車、バイクが入ってきます。とりあえずダフ屋を探したんですがいないんですねぇ、これが。友達が「ちょっと見てきます」なんて探してる間に、私は8ミリビデオとカメラを持ってそのへんウロウロしてました。ステージの反対側でクレーンが巨大なスピーカーを吊っていたので、どこにおろすんだろうと見ていたら、ナント、吊ったままでした。

 どうもここは大学の敷地内らしく、何万人も学生がいるので大学全体が一つの町になっているみたいです。スタジアムの外からもステージセットの上のほうが見えまして、たまに「ドドドドドンッ!」というリハーサルのドラムの音なんかが聞こえてきまして、もうそれだけでカンドーしてしまいます。思えばFLOYDのライブ見るためだけに、よくこんなところまで来たなあと自分でも感心してしまいます。88年に名古屋まで見に行った時は友達とか会社の人に「好きな人の真似はできねえよなぁ」とか「バッカじゃねえかぁ」とか言われましたが、今回アメリカまで見に行くと言ったらみんなあきれて何も言ってもらえませんでした。それにしても、私のわがままに付き合ってくれた友達には感謝、感謝です。

 
 
     
 
 
【第十一話】 ショウは始まらない
   Cyclone Stadium のまわりの広大な(大学の)敷地はすべて駐車場になっておりまして、とても日本では考えられないような風景が広がっております。例によって追っかけやってる連中のキャンピング・カーが集まってる一画があり、英語が話せたらこういう人達の話しでもゆっくりと聞いてみたいところです。

 とりあえずスタジアムを一周してみました。入り口周辺はパトカー、警察官でいっぱいです。アメリカの警察官ってかっこいいですよねぇ。昔、ハーレーに乗ってたころは憧れたものです。ハーレーなんか買わなければ、もっと沢山レコードが買えたし、もっといいステレオも揃えられたんだけどしょうがないですね。多分、ハーレーでPINK FLOYD流しながらあっちこっち「走り回って」いた日本人は私だけでしょう。

 ま、そんなことはどうでもいいとして、何百という仮設トイレがずらーっと並んでいて早くも長蛇の列ができているのにもびっくりしました。そういえばこちらでは立ち小便をしている人を見かけませんでしたねぇ。日本のようにあまり自動販売機がないとはいえ、空き缶やゴミがぜんぜん落ちていないのにも感心しました。駐車場の車のカーステレオからはFLOYDの音楽が流れ、ラジカセかついでそのへん歩いている人もFLOYD聴いていて、いかにもアメリカでのコンサート前の風景だなぁという感じです。2日前に見た時は町のど真ん中だったのでこういう感じではなかったですね。「I WANT TICKET」などと書いた紙を頭上にかかげながら歩いてる人もいます。ハダカで芝生に寝転がってる人もいれば、サッカーのまねごと、キャッチボールなんかやってる人もいて、ショーはまだまだ始まらないというのにみんな早くから来てるんですね。

 6時頃になるとFLOYDグッズの売店が十ヵ所くらい開店しまして、ここもまたいきなり長蛇の列でした。めぼしいものがなくなる前に何か買いたいなぁと思ったのですが「マネー」は友達に預けてあるのですぐには買えませんでした。ま、自分で持っていても言葉が通じないとなかなか買えませんよねぇ。それにしてもさっきから探しているんですけどいないんですよ・・・いや、ダフ屋は友達にまかせてあるのでそうじゃないんですが、私が探しているのは日本人なんですよ。ま、よく探せば何人かはいると思うんですが、すでにもう何万人も集まっているのでよくわからないです。いたとしてもアメリカ在住の日本人で、「私もわざわざ日本から見に来ましたよ。いやあ、やっぱりFLOYDはいいですねえ、ガハハハ」なんていう物好きはここにはまずいないと断言しちゃいますね。これがまぁロスあたりだったらいるかもしれませんがねぇ。

 しばらくして友達が「いやぁ、買えましたよ、安くてびっくりしちゃった。良心的なダフ屋だったなぁ」なんて言いながら帰ってきました。聞いたら33ドルのチケットが75ドルだったと言うんですね。私は100ドルくらいは取られるんじゃないかと思っておりまして、いくら高くてもいいから買ってほしいと頼んでおいたのですが、ホントに安いんでこっちもびっくりしちゃいました。

ところが、よく聞いたら2枚で75ドルなんて言われてまたまたびっくり!大学の敷地内で、ダフ屋も大学生なのであまりふんだくれないんだろうと友達は言ってました。あまりの安さにカンドーしていたら、ちょうどそこへ「TICKET HERE!」なんて書いた紙を自転車の前につけた別のダフ屋が来たので、記念にそのまま使わず持って帰ろうともう1枚買っちゃいました。ショーを見る前からこのへんはもう私、完全に「理性喪失」しておりました。それでチケットを見たら開演が9:OOPMとなっているのを見て、またもやびっくり!9時じゃ日本でやるつまらん手抜きコンサートなんかじゃとっくに終わって、アーティストなんか「やれやれ」なんて言いながらビール飲んでるころではなかろうか・・・んで、トーゼン9時には始まりませんから、こりゃ帰りはおそくなるなぁと思いましたが、とりあえず見られることになったので文句はありません。

それにしても、あと3時間もあるぞ〜〜!

        ☆         ☆           ☆

と、いうわけでなかなかショーは始まらない・・・

 
 
     
 
 
【第十二話】 ショウの始まり
   6月16日、IOWA,Ames,午後7時。アメリカで見るPINK FLOYD、2度目のショーの開演まであと2時間となったところでゲートが開き、やっと中に入ることができました。席は野球場でいえば内野と外野の境目あたりで、ちょうどいいところです。真正面がいちばんいいんだけど、照明がちょっとまぶしすぎますね。

 FLOYDのライブはどちらかといえば、正面に近いうしろのほうで見たほうが絶対いいですね。そのほうが照明の素晴らしさがよくわかります。こう言っちゃなんですが、アーティストの顔なんか見ててもしょうがないし、音のほうもあっちこっちにスピーカーが置いてあるので、どこで聴いても同じみたいです。いちばん前で見てる人なんか何やってるんだかよくわからないのではなかろうか。余談ではありますが(って、余談が多すぎるのでなかなか終わらないのでありますが・・・)88年に武道館で見た時はアリーナの前から10列目だったので、代々木の時はわざわざ後ろの席をダフ屋から買いました。名古屋の時は当日券でアリーナの7列目あたりがあったので、バック・ボーカルのねーちゃんになるべく近いところにしたことは言うまでもありません。日本公演では3回ともブタの出てくるところがそれぞれ違っておりました。名古屋の時は一部の途中でバリライトの球が1個切れちゃいまして、多分そのままだろうと思
っていたら、二部が始まる前にちゃんと取り替えておりました。

 ま、そんなことはどうでもいいとして、ここはアメリカです。始まるのが9時でずいぶん遅いなあと思っていたら、このへんはそのくらいにならないと周りが暗くならないんですね。8時過ぎても真昼のような明るさです。今日はどこで見られるかわからなかったので双眼鏡を買ってきました。それでステージ・セットをしみじみと見てみますと、ドームの天井にもびっしりとバリライトが取り付けられており、8本あるクレーンタワーのようなものにはレーザーを反射させる鏡が沢山ついていて、なにやらフクザツそうな装置がいっぱい置いてありました。

 観客は4万人くらいですかねぇ。まわりがみんな外国人ばかりなのにあらためて驚いてしまいます。どうも日本人は見当たりません。観客のほとんどはここの大学生らしいです。88年にコロンバス大学のフットボール・スタジアムでやった時は、6万人全部がそこの学生で、入れなかった4万人(なんと、学生の数10万人)が大騒ぎしたという話も伝え聞いております。

 2日前にインディアナで見た時は、ショーが始まる前の異様な雰囲気,怖くなるようなその盛り上がり方にちょっとビビってしまいましたが、ここは学生が多いせいかみんな静かにショーが始まるのを待っておりました。観客席のあっちこっちに赤と黄色のジャンパーを着た警備スタッフのような人が、ざっと数えただけでも500人くらいいて、「ビデオとかカメラ持ってるヤツいねえだろうな。いたら発見したら即刻取り上げるかんな!」という感じで目を光らせておりました。それでも、なんとかして撮ってるヤツというのはいるもので、この94年のツァーだけでも数多い海賊版ビデオが出まわっております。しかし残念ながら私が見たインディアナと、ここアイオワでのビデオはその後も見ておりません。あればトーゼン自分の姿を見つけますよねぇ。「おっ、いたいた、あそこ、いま一瞬チラッと・・・ちくしょう、もう
 一度映せえ!」なんてね。

 さて、時間のほうも9時になり、やっとあたりが暗くなってきました。サイクロン・スタジアムはすでに超満員で何万人入っているのかわからないという状況になってきました。天気のほうもとりあえず雨の心配はなさそうです。この、ショーが始まる前の、待っている間というものはなんとも言えませんね。ここに見に来ている何万人もの人達も、ここで見逃したら次に見られるまでにはあと何年待つかわからないわけですから、もうみんなここに来られてよかったという人ばかりだと思います。もしかしたら、次はもうないかもしれませんからねぇ・・・

 向いがわのスタンドの入り口への階段を見ますと,すでに立錐の余地もないというのにどこに座るのだろうと心配しちゃうくらい、まだまだ人がぞろぞろと入ってきます。そろそろ始まりそうな感じになってきたのでその前に友達が「ちょっとビール買ってきます」なんて買いに行ってる間ひとりになってしまったのですが、まわりがみんな外人なので、ちょっとひとりの間は怖いものがありましたねぇ。んで、ビールはカップについでくれるんですが、そのカップというのが『対』のロゴマークのついたものだったので、つぶさないようにして記念に持ちかえりました。

 そうこうしているうちに、9時20分くらいになってようやく始まる前のあの例のSEが流れてきました。「さあて皆さん,そろそろ始まりますよ」という感じで、これは非常に効果的だなぁと思いました。これが流れてきたら「オレ、ちょっとウンコ・・・」なんて悠長なこと言ってトイレなんかに行ってる場合じゃなくなります。

 そして、客電が落ちてアメリカで見るPINK FLOYD、2度目のショーのスタートとなりました。

 
 
     
 
 
【第十三話】 上半身だけの豚
   PINK FLOYD驚愕のスタジアム・ライブ,オープニングは2日前と同様 ASTRONOMY DOMINE です。この前はステージの真横に近いところだったので良くわかりませんでしたが、今こうして正面に近いところからステージ全体を見渡すと、かなり迫力があります。なぜ今FLOYDがショーのオープニングにこの曲を選んだのか?などという解説、分析などは私にはできません。ただ、見て感じたことしか書けないのでさっさと先に進みます。

 2曲目は LEARNING TO FLY。サポート・メンバーのパーカッションが大好きな曲です。野外だとレーザー光線がどこまでも伸びて実に壮大です。雲の低いところではレーザーで雲に絵を描いてしまうという話も聞いておりましたが、今日は晴れていたのでやっておりませんでした。ドームと野外での音の違いというのは、はっきり言ってあまり耳の良くない私にはわかりません。FLOYDのショーでは、耳に入ってくる音よりも、まずそのライティングに目を奪われてしまいます。これが、10回くらい見られるのであれば「どれ、今日はじっくり音の方を聴いてやろうじゃないか」と、いうことになるのですが、なんと言っても2回では私のような者には「なんたって照明がすごかった」なんていうことを書くのでせいいっぱいです。

 そうです、FLOYDのライブは大げさなライトショーの見世物でいいんです。曲のほうはCDでいくらでも聴くことができます。「いや、ライブの本質はそうじゃないんだ」という人もたまにはいると思いますが、ことFLOYDに関しては実際に見てしまうと「おっさん、何寝言言ってんねん」ということになってしまいます。ここにいる45000人の大半はそうではないでしょうかねぇ。でも、どーでもいいヒョーロンカのライブ評など読みますと、音もけっこう良かったみたいです。なんか他人事みたいですみません。私はそれよりもコーラスのおねーさんばかり双眼鏡で見ておりました。ちょっとずらして「あ、ギルモアもちゃんといたのね」という感じで・・・またまたすみません。わざわざ日本から何見に来たんだか・・・

 セットリストは2日前と同じなのであとはかんたんに書いていきます。TAKE IT BACK の照明は正面に近いところでは、やはり相当目にきます。1回パッとなっただけで、ウチの一月分の電気代をはるかに越えそうです。ところで、日替わりメニューの POLES APART ですが、これはもしかしたら両日とも A GREAT DAY FOR FREEDOM だったかもしれません。と、いうのもこの2曲は新しいアルバムからの曲であまりなじみがなく、たいして好きな曲でもないのであまりよく覚えておりません。情けない話で申し訳ないんですが、私のFLOYDの好きさかげんというのはこの程度のものでございます。

 一部のしめくくりである ONE OF THESE DAYS になりますと、それまでおとなしく見ていた観客もさすがに騒ぎ始め、アリーナの前のほうでは立ち上がる者も出てきました。しかし、くどいようですがこれまたステージ全体が見渡せるところから見るとスゴイ演出です。ま、ブタはうしろでスタッフが引っ張っているというのが前回見てわかっちゃいましたからたいしたことありませんが、あの、なんて言うんですかね、火がボンッって上がるやつ・・・あれなんか近くで見てるとホント熱いんですが、ここは屋根がないのでその分高く打ちあがっているようです。日本でやるヒヨコのライブでもたまに火が上がることがありますが、火薬の量がハンパじゃないです。88年の日本公演で火気を一切使わなかったのは、中途ハンパにやるんだったらやらないということなんでしょうねぇ。ま、火が上がればいいってもんでもないんですが私のような単純なファンなど、それだけで「わっ、スゴイッ!」なんて喜んじゃいますからね。FLOYDが来日しないのは、つまらない消防法とかのいろいろな規制で自分達の思ったようにできない、というのもあるのではなかろうか。まあ、それだけじゃないですけどねぇ・・・

 いずれにしても、聴覚だけではなく、視覚面でもたのしませてくれるFLOYDはやっぱりエライッ!ということになりますね。「ならねえよっ!」という声は無視して話を続けます。そうじゃないとこのツァー記、いつになっても終わりません。ビデオしか見たことがない人はわからないと思いますが、ONE OFTHESE DAYS の曲の終わりと共に二頭のブタ、シドとロジャーはミニドームから転落して見事に最後を遂げます。しかし、それが上半身しかありません。いくら今回は半分だけ身を乗り出したかっこうで暴れているだけとはいえ、ちゃんと全身作ってほしかったですねえ。ワタシャ、上半身だけのブタが「ふわあ〜っ」なんつって落ちてくるのを見て、一瞬、目が点になったあと思わず大笑いしてしまいました。これが今回のショーでは唯一の「なんじゃ、こりゃあ」でしたね。

 一部終了後、例によってギルモアが「このあとは15分後ね」なんて言いながらいったん引っ込んだあと、こっちも「やれやれ」なんつってすっかりぬるくなってしまったコーラ飲んでいたら、隣の大学生らしいアメリカ人(トーゼン!)が私に何か話しかけてきました。オレに英語で話しかけてくるなんていい度胸しているなぁ、と思いながらも友達に「何か言ってるぜ」と、通訳を頼んだところ、どうやら次の会話が成立したようです。

  大学生「半分終わったけど見てどう思うか?」
  友達「まったく素晴らしいコンサートです」
  大学生「オレは今までこんなの見たことなかった」
  友達「私もそうです。彼(私ですね)はこのコンサートを見るためにわざわざ日本からやって来ました」

 このあと、何やらうれしそうに言いながら手を差出してきたので、思わず握手しちゃいました。「一部もすごいけど二部はもっとすごい」と言ったら「そいつは楽しみだ」と言ってニコニコしておりました。このあと友達が2杯目のビールを買ってきたので、「対」のロゴマークの入ったカップのおみやげが2つになりました。実はショーが終わったあとは、このカップがあっちこっちに落ちていたので全部拾ってきたかったのですが、とても全部日本まで持ち帰れないなぁと思い、泣き泣きあきらめました。インディアナで見た時はどうしたんだと言いますと、あ然、呆然としていまして、そのへんまでよく覚えておりませんでした。これが日本だったらもぅちょっと余裕があったと思うんですが、なんせアメリカまで来て、この時はこれ1回しか見られないと思っておりましたから、全神経をステージに集中していたためそこまで気がつきませんでした。そのわりにはあまりの照明のすごさに圧倒され、こまかいところまでよく覚えていないというのが正直なところであります。まぁ、誰でもあれ見たらそうなっちゃうと思いますよ。

 と、まぁそんな訳で客電おちて歓声ひときわ高く上がり、第2部のスタートとなりました。

 
 
     
 
 
【第十四話】 そして…すべての終わり
   第二部のオープニング CRAZY DIAMOND が始まると、例によって円形スクリーンがゆっくりとせり上がってきます。これまでのライブでも必ず使われてきたこの円形スクリーンは、これまでは固定式で動きませんでしたが、今回あの大きなモノを動くようにしたというのにもびっくりしました。一部はスクリーンなしでもすごかったので、二部が始まってスクリーンが出てきた時は知らない人はびっくりしたのではないでしょうか。(って、やはりみんな知ってますよね)FLOYDのライブにはこれがないと話になりませんからねぇ。インディアナの時は CRAZY DIAMOND のイントロ、3分過ぎたあたりでギターが一音間違えておりましたが、今日は完璧のようです。友達も「ギルモアのギターは好きだ」と言っておりました。

 2曲目の BREATHE IN THE AIR は単発で演奏するのはどうか?という曲ですが、これもあの照明を見ていると「そんなことはどうでもいい」という感じになってきます。そして、3曲目の TIME はもうなんとも言えませんね。これを聴いていると『狂気』のテーマは疎外感であるとか、「人の心の奥深くに潜む狂気」などというそんなコムズカシイ解説なんかこれまた「どーでもいい」という気になってきます。理屈抜きでCD聴いていても1人で盛り上っちゃう曲なので、それを生で聴ける、見られるというのは本当にここまで来て良かった、ギルモアがFLOYDを続けてくれて良かった、そして、生きていて良かったとしみじみ思っちゃいます。

 誰かが「FLOYDのライブの素晴らしさを文章で表現するのは無理だ」と、言っておりましたがまったくその通りでありまして、ただでさえモノを書くのが苦手な私がやっているこの「ツァー記」などは無謀な挑戦以外のなにものでもございません。

 そうこうしているうちにも曲はどんどん進んでいくのですが、すでにインディアナのところでねちっこく書かせていただきましたし、セットリストも同じなのであとはかんたんに書いてこの壮大な(どこがぁ)「ツァー記」を早いトコかたづけたいと思います。もともとアイオワ編はおまけなのでここらで勘弁してください。THE GREAT GIG IN THE SKY の時は双眼鏡でコーラスのねーちゃんを口あいたまんまで見ておったのですが、途中見るのをやめたとたんにとなりのアメリカ人大学生が「貸してくれ」というようなジェスチャーをしたので、貸してやったらやっぱりうれしそうに見ておりました。ま、口はあけておりませんでしたが・・・

 WISH YOU WERE HERE はここでも大合唱になりまして、どちらかといえばこれはFLOYDの曲という感じがしないというところもあるのですが、根強い人気のある曲です。1977年の「イン・ザ・フレッシュ・ツァー」でもこの曲は演奏されましたが、この時はべつに合唱にもならず、みんなが一緒に歌うようになったのは1987年の「鬱ツァー」からですね。こう見てくると1987年に復活を遂げたFLOYDのライブで、この曲をみんなに歌わせるようにしたD・ギルモアというのもたいしたアーティストだと思います。「いまごろ何を言ってる」と言われる方もあろうかと思いますが、当初は批判的な見方も多かっただけにギルモアもやはり偉大な人物であったとつくづく思ってしまいます。ま、なんといっても世界のPINK FLOYDのリーダー(なんでしょうねぇ)ですからね。

 それにしても「鬱ツァー」で観客が合唱しているのをステージ上から見ていたギルモアは「やはり、オレは間違っていなかった」と、思ったのではないでしょうか。

 曲のほうは US AND THEM 、MONEY と続きまして、これまた「待ってました!」の ANOTHERBRIC IN THE WALL Part 2 です。この曲で総立ちになるというパターンがもう出来上がっておりますね。全部見た訳ではないのでわかりませんが、海賊盤ビデオなど見るとどうもそんな感じです。この曲は大合唱にこそなりませんが、やはりみんな一緒に歌っていました。

 最後の COMFORTABLY NUMB で後半のギター・ソロに突入すると円形スクリーンがゆっくりと前に倒れてくるんですが、このへんの感じはもうこのへんまでくると胸がじぃ〜んと熱くなってしまいます。この、ギター・ソロに突入する瞬間のフレーズも大好きでありまして、これを聴くと思わず両手を上げて「うお〜っ!」と叫んでしまいます。スローな曲ではありますが、見ている方はけっこう忙しいです。この曲はその日の調子によって8〜10分くらいになるんですが、この日はミラー・ボールの調子が悪くて途中で止まってしまい、ギター・ソロで引っ張ったため12〜13分くらいやっておりました。なんか「もうけた」という気がしました。ミラー・ボールは野外よりも、やはりドームのほうがきれいです。

 アンコールの HEY YOU では最後の高音のパートをギルモアが歌えないため、サポート・メンバーのジョン・キャリンが歌っておりましたが、やはり苦しそうでありました。そして、とうとう最後の RUNLIKE HELL は、もう何も言うことはありません。曲が終わって花火が上がる中、手を振って挨拶をしているメンバーを見ていて、ついに涙腺がゆるんでしまいました。もう、涙が止まらない・・・・・

 2日前は「もう帰りますよ」と言った友達もこの日は「わあ、うれしそう・・・」と言ったきり、私が立ち上がるまで最後まで、いつまでも横に座っていてくれました・・・・・

        ☆           ☆            ☆

あとがき

 1994年、PINK FLOYDのライブをアメリカで、しかも2回も見られたということは、これはもしかしたら私にとっては人生最大のイベントであったかもしれません。実際に見に行くまでは、そのライブがどのようなものなのか活字でしかわからなかったのですが、すくなくとも1988年に日本で見た時よりはスケール・アップしているであろうというのを想像するのはかんたんなことでありました。そして、その予想をはるかに上回るステージングは「ここまでやってしまって、次はどうするんだろう」と、心配になってしまうくらい素晴らしいものでありました。自分の言いたいことはもう書き尽くしましたので、くどくどとは申しませんがFLOYDのライブを言葉で表現するのは本当に難しいことです。あとはビデオでも見ていただいて、その想像の輪を広げていただくしかありません。

当時、FLOYDについて語ることができた唯一の友人で、アメリカでお世話になった糸井氏にこの「PINK FLOYD北米ツァー記」をささげたいと思います

 
 
     
 
 
【第十五話】 コンサート・データ
  1994,06,14 TUE.
USA, INDIANA, Indianapolis, Hoosier Dome,
Audience: 44,762 (?)

1994,06,16 THU.
USA, IOWA, Ames, Cyclone Stadium,
Audience: 46,273

Set List 6,14 / 6,16

Astronomy Domine
Learning To Fly
What Do You Want From Me
On The Turning Away
Take It Back
Sorrow
Poles Apart (A Great Day For Freedom ?)
Keep Talking
One Of These Days

Shine On You Crazy Diamond Part1,2,3,4,5
Breathe In The Air
Time
High Hopes
The Great Gig In The Sky
Wish You Were Here
Us And Then
Money
Another Bric In The Wall Part2
Comfortably Numb

Hey You
Run Like Hell
 
 
     
     
 
   ここに掲載した文章は「フロイド北米ツアー記」として「プログレオヤジ同盟(99年5月発足〜02年3月閉鎖)」のコンテンツ用に「PINK」さんより寄稿していただいたものです。形を変えての再登場となりました。 (LuckyMan)