ところで、このツァー記はホントはもっと早く終わるはずだったのですが、途中で話しがあっちこっち それてしまうのでなかなか終わらず、なんかNHKの大河ドラマのような大作になってしまいました。た いして読んでくれてる人もいないのにオレもよくやるよと、自分でも感心してしまいます。まぁここまで書いてある雑誌のライブ評というのもないと思うので話のタネくらいにはなるでしょう。
それでショーのほうは第二部7曲目のUS AND THEMになりました。これはなんというかうまく解説できませんが、いい曲なんですけど何回も繰り返して聴くような曲ではないです。例によって円形スクリーンには、わかったようでよくわからない映像が映し出されるのですが、曲の雰囲気に合ったような映像で妙に納得してしまうのは私だけではないと思います。いまさら言うまでもないと思いますが、このツァー記は実際に私が見て感じたことを好き勝手に書かせていただいているものなので、その曲に対する解説などは極力省いて(まぁ、書けと言われてもそういうのは書けませんが・・・)どのようなショーであったかということだけを書いているつもりなんですが、なんかダラダラと長くなってしまって申し訳ないと思っております。 と、まぁそんなわけで8曲目はMONEYです。ここでも新しい映像が使われましたがお遊びのような映像で、イントロのレジスターがリズムを刻む音も無理に引き延ばされて私はあまり感心しませんでした。でも、四方に置かれたスピーカーの間を音が飛び交うのはよかったです。こういうのはビデオではわからないのが残念です。『狂気』完全版の時はオリジナルに近い演奏と昔の映像に戻されていましたが、やはりこちらのほうがいいです。MONEYの中盤では各自がソロをとる場面もありますが、FLOYDのライブにこういうのは必要ないと思っているのは私だけでしょうか・・・ さてさて、第二部も残すところあと2曲となりまして、ラス前9曲目は私の一番大好きなアルバムの『THE WALL』からANOTHER BRIC IN THE WALL Part 2 です。ヘリコプターの飛んで来る音で始まるこの曲ではPart 1 の一部をイントロに使い、レーザー光線の大盤振る舞いでまず観客を沸かせます。ここで本日のショーでは観客がやっと全員立ち上がりました。その立ち上がり方がいかにも「待ってました!」という感じで、もうこの曲はライブではやらないわけにはいかないですね。ツァー当初は第二部の中盤で演奏しておりましたが、やはりこの曲は終盤でやったほうがいっそう盛り上がります。 歌に入るとまたまたバリライト攻撃が始まり、ホントによく球切れたりこわれたりしないなぁと感心するばかりです。FLOYDの曲というのは後半にギター・ソロが入るというのがけっこうありまして、この曲もそうなんですが、ギター・ソロの時に円形スクリーンとステージ全体に映し出されるバリライトの七色の絵模様はまるで万華鏡の世界を見ているようでありました。FLOYDは昔から「音と光の魔術師」などといわれておりましたが、まったくその通りでその音楽に合わせて見事にシンクロする大仕掛けな照明は、すべてのギターの弦、キーボードのキーがコンピューターにつながっているのではないかと思っちゃいます。 これはもう、とても他のお子様ロック・バンドのおよぶ領域ではございません。最初にステージ・セットを見た時は「なんでこんなの組むのに3日もかかるんだぁ」と思いましたが、まぁ見てびっくり、これじゃしょうがないです。なんでも聞くところによりますと、次の公演先のショーに間に合わせるように同じセットを三つ作ったそうでありますよ。インディアナポリスでショーをやってる間に次のアイオワとデンバーではもうセットを組んでいる最中らしいです。なんともスケールのでかい話しで日本のような島国など最初から眼中にないという感じです。金さえかければなんでもできるさ、というバンド、ジャーナリストもおりますが誰もやろうとはしませんね。失敗したら大赤字になってしまいますからねぇ、U2のように・・。 唯一この手のライブで対抗馬をあげるとすればストーンズでしょうが、そのストーンズがFLOYDのために(公式には申しておりませんが・・・)チケットの値段を安くしたというのは、日本ではあまり知られていない話です。チャーリ−・ワッツも「FLOYDのライブは気になる」と正直に言ってます。「だから、どうした?」という人は相手にしないで話を進めます。 と、まぁそんなことはどうでもいいとして、このANOTHER BRICK IN THE WALL Part 2 はFLOYDにしては珍しくシングル・ヒットしまして、その歌詞が「子供の教育上、非常によろしくない」などと言われ州や国によっては発売、放送禁止になったにもかかわらず、1位を記録しています。『THE WALL』は年間チャートでも1位になりましたがANOTHER BRICK IN THE WALL Part 2 は惜しくも2位でした。この時の1位はブロンディのCALL MEです。デボラ・ハリーのバカヤロ〜〜! PINK FLOYD衝撃のスーパー・ライブもいよいよあと1曲を残すのみとなりました。目もくらむ閃光を放ちながら ANOTHER BRIC IN THE WALL Part 2 が終わった後D・ギルモアが「今日は来てくれてみんなありがとう」と、いうような挨拶をして、「次が最後の曲」と言うとみんなして「まだやめるな」、「もっとつづけろ」というように一斉にブーイングが起こります。 「最後はCOMFORTABLY NUMB 」と曲紹介すると、これがどのような曲かみなさんよ〜く知ってますからそれだけで大歓声になります。照明が落ちて暗くなってもなかなか始まりませんが、みんな静かに曲が始まるのを待っています。ここが88年に日本でやった時と違うところですね。何も知らない日本のオーディエンスはなかなか曲が始まらないものですから手拍子であおるんですね。まぁ普通だったらこれで曲が始まると手拍子したまま待ってましたの全員総立ちに突入!ということになっていくと思うんですがそこがFLOYD、ちがうんですね。曲が始まったとたんに手拍子がピタッと止まってしまったのには「何も知らないバカめが!」と思い、笑ってしまいました。 COMFORTABLY NUMB の重〜いイントロが始まった時の歓声はすさまじいものでありました。アメリカでの『狂気』『炎』『ザ・ウォール』の3枚に対する人気、ファンのこだわりというのは相当なものです。ビルボードには「トップ・ポップ・カタログ」というチャートがあるんですが『狂気』は四半世紀を過ぎた現在でもチャート・インしており、7月31日付でも14位で登場回数は1165週です。文字通りのケタ違いで2位にダブル・スコアの大差をつけて記録を更新しながら独走中です。では2位は何かというとこれがまた『ザ・ウォール』で500週を越えて20位前後でウロウロしてます。と、まぁこのような状況ですからライブでの盛り上がり方というのも、それはもう大変なものです。 ライブだとよりいっそう重くなる歌と演奏で進んでいく COMFORTABLY NUMB の最大の見せ場はやはり後半のギター・ソロです。このギター・ソロに入る瞬間のフレーズなど何度聴いてもぞくぞくしてしまいます。曲に合わせて、それまで正面を向いていた円形スクリーンが徐々に倒れてきて平らになり、その強烈な光で真上からステージを照らすところなど圧巻です。演奏が進んで行くとアリーナ席中央の巨大昆虫のようなテントが開き、これまた実に巨大なミラー・ボ−ルが現れ上に向かってどんどん伸びていきます。どれくらい大きいかというと、まぁ八畳間くらいの大きさです。まだ照明が当たってないので前のほうで見てる観客はきがつきませんが、場内はもう大騒然としてきます。 そして、ますます冴え渡るギルモアのギターと観客のテンションが頂点に達したクライマックス、突然ステージの照明が全部消えて真っ暗になった次の瞬間、四方八方からのライトがミラー・ボールめがけて放射されます。この時の大歓声・・・・・ドーム内全体が水玉模様なった美しいけれど異様な光景はとてもこの世のものを見ているとは思えないほどの感動で胸がジーンと熱くなってしまいました。う〜ん、この時の感じはビデオしか見たことない人には、いくら書いてもわかってもらえないだろうなぁ・・・ ちょっと想像してみてくれませんか。真っ暗になった東京ドームの真ん中で巨大なミラー・ボールだけが回っているという光景を・・・たかがミラー・ボールですがFLOYDの手にかかるとそれがどれほど人に感動を与えるかはこの日一番の歓声が証明しています。「だから、FLOYDファンはバカなのだ」、「そんなことばかりして乏しい演奏力をカバーしてるのさ」と、言う人もおりますが、それで30年もやっていけるとはとても思えません。ミラー・ボールはこれまでのPINK FLOYDの歩みを表すように、時には振りかえるようにゆっくりと回り続けます。そして再びステージに照明が戻ると、ミラー・ボールは上下に花びらが開くように割れていき、さらにその中にも照明があって、それも回りながらよりいっそう強烈な光で観客を照らし出すという、「観客席とステージをイマジネーションで一体化する究極のライブ・パフォーマンス」(D・ギルモア)はここに最大のクライマックスを迎えました。 曲が終わった後も興奮さめやらぬ観客の拍手はいつまでもドーム内に響いておりました。う〜ん、私は死ぬ時はこの曲を聴きながら、この時の光景を思い浮かべながら死にたい・・・・・ |