『in the flesh』について
ついにリリースされたロジャー・ウォーターズ初のライブ・アルバム『in the fresh』。ほぼノー・カットと思われる2CD、150分近い大作である。
これについて何か書こうと思ったのであるが、今回のツァー・タイトルが23年前の「アニマルズ・ツァー」と同じく、なぜ「イン・ザ・フレッシュ・ツァー」なのか?それすらもわからない私にまともなことが書けるわけもないので、聴いて感じたことだけをかんたんに書いてみた。
DISC1
1.IN THE FLESH
オープニングは『THE WALL』から「IN THE FLESH」である。次に続く曲を見ると、どうしても「IN THE FLESH ?」だと思ってしまうが「?」なしのほうである。ここでいきなりファンは一瞬とまどったのであるまいか?当然「?」のほうだと思っていたのに、「?」なしのほうが始まったのだから・・・しかも、曲の最後には爆音と赤ん坊の泣き声が入っているのである。
ま、いずれにしても、これはオープニングにふさわしい曲なので、いきなりファンの品定めをしながらその幕は切って落とされたのである。
2.THE HAPPIEST DAYS OF OUR LIVES
ヘリコプターが飛んで来る音で始まるこの曲は、私は大好きである。ただ、この曲が終って次の曲に移る瞬間、オリジナルでは「キァアーーーッ!」という奇声が入るのだが、これが入らないのはちょっと残念である。先にリリースされた『THE WALL LIVE』にもこれは入っていない。
3.ANOTHER BRIC IN THE WALL, PART 2
毎度おなじみの曲である。やはりこの曲は前の曲とセットで演奏されたほうがいいように思う。これも現FLOYDと同じようにギター・ソロの部分がちょっと長めになっているが、このあたりでは「やはりギターはギルモアでなくてはいかん」ということもないようだ。歌詞のコーラスのパートを最後にもう一度繰り返すのは、ただのファン・サービスであろうか?
4.MOTHER
オリジナルに忠実な演奏で、とくにどうということもない。アコースティック・ギターはロジャーである。
5.GET YOUR FILTHY HANDS OFF MY DESERT
最初に爆発音のようなものが聴かれるが、これが入らない時もあるようだ。やはり、火薬を使用できない会場ではこの爆発音も入れないらしい。
6.SOUTHAMPTON DOCK
『THE FINAL CUT』はあまり聴いていない上、前曲とつながっているのでボーッとして聴いているとトラック・ナンバーが変わったのに気がつかない。このへんもたまにライブでこういう演奏を聴くのも良いが毎日は聴きたくない。バックのスクリーンにはなぜか『THE WALL BERLIN』の時の映像が映される。
7.PIGS ON THE WING, PART 1
次への導入部のような曲で、とくにどうということはない1曲。
8.DOGS
この長い曲をよくライブでやったものだと思う。最初のアコースティック・ギターと歌はジョン・キャリンである。とくに悪くはないが、ギタリストが3人いて、ロジャーもギターを弾くのになぜキーボード・ブレーヤーのジョンが・・・?
これもオリジナルに忠実な演奏で、中間部のギターも「これならギルモアじゃなくてもいいかな」と思えるような出来である。うん、これはいいかも・・。私としては「PIGS」をやってほしかったが・・・
9.WELCOME TO THE MACHINE
現FLOYDが「鬱ツァー」でも演奏したが、これはやはりボーカルはロジャーのほうがいいような気がする。
10.WISH YOU WERE HERE
ロジャーのツァーではこの曲は合唱にはならないようである。ビデオなど見ると「みんな歌わないでじっくり聴いてくれ」と言って制止しているような様子もないのだが、どうしてだろう?演奏はオリジナルと大体同じ。
11.SHINE ON YOU CRAZY DIAMOND
現FLOYDの演奏と比べると、イントロのシンセサイザーに厚味がないような気がするのだが、どうもこのあたりはリックじゃないとだめなようである。ギターはおもにスノーウィー・ホワイトが弾いているのだが、なんかトリビュート盤を聴いているようでどうもパッとしない。
PART 6 〜 8 も演奏されていて、こちらのギターはアンディ・フェイザー・ロウ(読み方合ってる?)が弾いているが、あれはなんというのか知らないけれど「アニマルズ・ツァー」同様、スチール・ギターのようなものを使用していないので、スリリングな演奏にならずイマイチである。
この曲の唯一の見所は、そのうちライブDVDで見られるであろうスクリーン映像である。これを見たらきっとみんな泣いてしまうに違いない。
12.SET THE CONTROLS FOR THE HEART OF THE SUN
CDではDISC1の最後に収録されているが、実際には第2部のオープニングで演奏された。この曲はロジャーのツァーでは以前から演奏されていたが、今回が一番いい。だが、あのサックスはどうもいただけない。1999年のツァーではセット・リストから外れていたが、2000年になって復活したのはやはり、リクエストが多かったのであろう。ただ。この曲はオープニングには向かないような気もする。
DISC 2 1.BREATHE (IN THE AIR)
おなじみ『THE DARK SIDE OF THE MOON』からの曲。心臓の音がやや押さえ気味だが、現FLOYDと同じような演奏。
2.TIME
さて、「TIME」である。なんか間延びした演奏で、イントロのタイコがちょっとさえない。私の好きな間奏のギターもパッとしない。同じようだが、どこか違う。「現行FLOYDと同じようにしたくないから、このギターでこういうふうに弾け」というロジャーの指示によるものだろうか?それとも私の耳には現FLOYDの音がこびりついてしまったしまったためであろうか・・・
3.MONEY
1999年のツァーでは「THE GREAT GIG IN THE SKY」もたまに演っていたようだが、2000年は演っていないようだ。また2000年は『RADIO K.A.O.S』からは1曲も演奏されていない。
ロジャーの「MONEY」は、まあ良くも悪くも無い演奏である。現FLOYDの「MONEY」は、中盤で各自ソロをとる場面もあるのだが、あれは私にはちょっと退屈してしまうので、今回のロジャーの演奏のように無いほうがいいと思う。
4.5:06 AM EVERY STRANGER'S EYES
あまり評判の良くない『THE PROS AND CONS OF HITCH HIKING』からの曲であるが、私はこのアルバムは大好きなので、これはうれしい。最後の美しいタイコの音がいいのだが、ライブだとその透明感のようなものが再現されないのは仕方がないか・・・
5.PERFECT SENSE PART 1 &′
現時点での最新アルバム『AMUSED TO DEATH』からの曲。このアルバムをリリースした時「200万枚売れたらツァーをやる」と言っていたのだが、実現しなかったので『AMUSED TO DEATH』からは初のライブ演奏となる。曲自体はあまり良いとは思わない。歌詞に重点を置いているのだろうが、困ったことに私はあまり歌詞を読まないのでこういうのはちょっと退屈してしまう。
6.THE BRAVERY OF BEING OUT OF RANGE
第2部後半は同じく『AMUSED TO DEATH』からの曲が続く。このあたりまできて、やっとロジャーのソロ・ライブのようになった、と言ったら他のロジャー・ファンに怒られてしまうだろうか。
7.IT'S A MIRACLE
このあたりがこのライブ・アルバムの中で最大の聴き所であろう。これはもう、これまでのFLOYDの曲は何だったんだ?と言いたくなるような素晴らしい歌と演奏だ。この曲では、ロジャーはベースを弾かず、マイクの前で両手を合わせ祈るように歌っている。
8.AMUSED TO DEATH
12年振りに敢行されたロジャーのソロ・ツァーは、アルバム『AMUSED TO DEATH』のタイトル曲で静かにクライマックスを迎える。ろくに歌詞も読まず、読んでも理解できない私のような半端なファンが、それでもこれを聴いてゾクゾクしてしまうのはなぜだ?涙があふれてしまうのはなぜだ?
うーん、わからない・・・だけどオレはこの曲が、ロジャーが好きなんだあー!!
9.BRAIN DAMAGE
10.ECLIPSE
そのアルバムを全編通して聴かないとその良さが生きないようなこの2曲を、最後に持ってきたのにはちょっと無理があったように思われるが、ロジャーのことだから、きっとそこには何か深い意味があったのだろう。私にはそれはわからない。きっと誰にもわからないのではないか・・・
でも、前2曲を聴いてしまうと「ロジャー、君はもうFLOYDの曲はやらなくていいんだよ」と思ってしまうのは私だけだろうか・・・?
11.COMFORTABLY NUMB
現FLOYDのこの曲を聴くと、わけもなく興奮してしまう私であるが、さて、ロジャーはこの曲をどのように演奏した(させた)のであろうか・・・
イントロから始まって、歌の部分、間奏のギターには破綻はない。しかし・・・である。後半のギター・ソロに突入すると様相は一変してしまう。スノーウィーとアンディが交互にギターを弾いているのだが、聴いているうちになんだか違う曲になってしまうのである。これはこれでなかなかいいのだが、ギルモアのいつものフレーズが出てこないと「あれっ?」と思ってしまう。
まあ、オリジナルのギター・ソロは元々そんなに長くないのをギルモアがロング・バージョンにしてしまったので、どちらが正しいというわけでもないのだが、10年以上ギルモア・バージョンを聴き続けてきた私にはどうも違和感が残ってしまう。どうもこれでは、死ぬ前に聴く最後の1曲にはならないようである。
12.EACH SMALL CANDLE
今回のライブで初披露となった新曲である。8分あまりの曲で、これがどのようないきさつで作られたかはともかく、この曲が次のアルバムのメインになるようでは新作には期待できないかも知れない。私のように音しか聴かない者にとっては・・・
ということで、大半をFLOYDの曲で埋め尽くしたこのライブ・アルバムを聴いて一番感じたことは、ロジャーはつくづくソロ・アーティストなんだなあ、ということである。これからはFLOYDの曲などやらずにソロ・アルバムからの曲だけをやったほうがいいと思う。『THE PROS AND CONS OF HITCH HIKING』にも『RADIO K.A.O.S.』にも良い曲は沢山あるのだから・・・
それでも、このライブ・ビデオを少しでも早く見たいと思うのは、またまたなぜだ!?
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