『衝撃のTHE WALL LIVE』
【前説?】
『THE WALL SHOW』の完全版ライブ映像といえばこれまでに2本出ているが、どちらもプロショットにしては非常に画質が悪く、見るたびにイライラさせられたが、今回「これならなんとか・・・」と言えるものがやっと出た。
『PINK FLOYD THE WALL PERFORMED LIVE EARLS COURT LONDON 8-9 AUGUST 1980』という長ったらしいタイトルのついた映像がそれで、時代も変わったもので今回はDVDでのリリースである。
それでも、まあ普通の人が見たら「こりゃちょっと酷いんでないかい」と言われそうだが、私にとっては実に衝撃的な映像なのであります。これはなんというか、オフィシャルも含めた映像ものでは『対』ツアー、アールス・コートでのブート映像を見て以来の感動である。
例によって、ムズカシイ解説などはできないので、見て感じたことなどを曲順を追いながらつらつらと書いてみたい。
【DISC 1】
1. IN THE FLESH ?
このオープニング曲が始まる前に Gary Yudman という人のかなり長い、いわゆる前説と言われるものがあるのだが、本映像では顔がちょっと映っただけでいきなり「IN THE FLESH ?」が始まる。
で、まず最初に感じたのは肝心なその画質であるが、既出の2本よりはかなりいいと思う。まあ、普通の人が見たら「なんじゃこりゃ」という画質だが、私にとってはもう許容範囲内である。音は、とくに良くもなければ悪くもない。どちらかと言えば良いほうかな。
よく見ると全編を通して全体に薄く細かいモザイクのようなものがかかっており、もしかしたら、わざと画質を落として流出させたものではないか?なんて思ってしまう。いや、誰が流出させたのか知りませんけどね。
正直なところ、最初は『BEHIND THE WALL』でほんの少しだけ見られるくらいの画質だったらいいなあ、と思ったのだが、さすがにあそこまでは及びませんでした。でも、メンバー4人がお面をつけているのがよくわかるというだけでもこれはすごい映像だと思う。
2. THE THIN ICE
この曲から本物のメンバーが登場。うう・・ギルモアいい男、だったなあ・・・
曲が始まる前にドラム・セットがせり下がっていき、いつの間にか違うドラム・セットとニックが・・・やはりサポート・メンバーのドラム・セットとは違うのですね。
ロジャーは例によっていつもの1番Tシャツ、他の3人も実にラフな恰好をしている。
3. ANOTHER BRICK IN THE WALL Part 1
この曲では、ロジャー以外の3人にサポート・メンバーがついているが、ここでもそれぞれお面をつけているかどうかは確認できない。いつの間にかドラム・セットが2台になっている。
4. THE HAPPIEST DAYS OF OUR LIVES
目から光線を照射する巨大なティーチャーの吊り人形が登場。
どうも、サポート・メンバーは2曲目以降はお面をかぶっていないようである。
この曲は大好きでありまして、映像的には歌い終わったあとロジャーがベースのネック(というのかな?)を上に上げながら、つつつーっとあとずさりしていくところがえらく気に入っているんですが、本映像ではそこんとこがイマイチでしたね。
あと、オリジナルでは次の曲が始まる寸前に「きあぁーーーっ」という奇声が入るんですが、それもないのがちと残念。
5. ANOTHER BRICK IN THE WALL Part 2
大ヒットした曲ですね。ロジャー、けっこう気合入ってます。
円形スクリーンにはさまざまなアニメが映し出されるが、周りについてるライトはどうもバリ・ライトのようにほとんど動き回らない。もしかしたら下向きかげんに固定されたまんまかも。
歌のあとの後半の演奏はギターとドラムはサポート・メンバーと交互に演奏しているようである。このへん、この曲では『鬱』&『対』ツアーでも同じでしたね。
6. MOTHER
最初はロジャー1人がスポット・ライトを浴び、アコースティック・ギターでたんたんと歌う。
上のほうにはマザーらしき人形が・・・これも4〜5メートルありでかい。
ロジャーはずっとヘッドホンをしたまま歌ってるんだけど、これってどうしてですかね? どうもこういうのってよくわからないです。
ギルモアは曲によっていろいろとギターを替えているようです。
7. GOODBYE BLUE SKY
このへんまで来たらいつの間にか壁が半分くらいできているようなのだが、壁積み作業の進行状況というのが本映像ではよくわからない。ステージが暗い・・・というか、あまり照明が全開になるような時もないのですね。鮮明画像ならそのへんもよくわかると思う
んですけどね。
8. EMPTY SPACES
愛を語り合う(?)エッチな花が円形スクリーンに映し出される。
しかし、この曲のなんというか、何かが迫ってくるようなイントロの曲展開というものはいつ聴いてもゾクゾクしてくるものがありますね。さらに、このあたりのアニメ映像は『THE WALL』映画版で見てぶっ飛びまして、アニメのところだけビデオにダビングしてよく見ていたものです。
このあたりでは、ロジャーはベースを弾かずボーカルに専念している。しかし、ベースのサポート・メンバーはステージ上にはいない。
9. WHAT SHALL WE DO NOW ?
これも映画版で初めて聴いて、そのアニメと共に仰天した曲であります。
前曲との流れというかつながりぐあいも良く、4〜5同様にこの8〜9もセットで聴くとなおいいかな。
ちょっと激しい曲ではありますが、映像を見ると派手な照明演出もなく「なんだかなあ・・・」という気もしてくるのだが、これを鮮明画像で見たらロジャーの絶叫に近い歌い方、ドラム2台の迫力(ここんとこ大好きなんですよ)、スクリーンのアニメなど見て発狂状態になってしまうでしょうね。
10. YOUNG LUST
ロジャーとギルモアの顔がくっつきそうになるくらいの距離で1本のマイクで歌うこの曲も、今となってはもう見ることもできない(?)ので実に感動的である。前半のハイライトのひとつかな、映像的には。
このへんの映像は至近距離からのものが多く見応えあり。
11. ONE OF MY TURNS
相変わらず1のTシャツを着て、両手でマイクを持って歌うロジャーのアップが多い。
曲調が変わったところで、カマキリの頭のような人形が現れる。
ベルリンではこの曲で派手に暴れまくったロジャーだが、本映像では物を投げつけることもなくやや物足りない感じもする。
気がつけば、壁は8〜9割りがた完成している。
12. DON'T LEAVE ME NOW
前曲に続きロジャーはボーカルに専念。壁の一番下(に登る階段)に座り、何かに怯えるように、苦しそうに歌ってる。それを巨大なティーチャーの人形がじっと見つめる。
13. ANOTHER BRICK IN THE WALL Part 3
壁はほぼ出来上がり、真ん中あたりの空間からしかアーティストを見ることができない。壁の向こう側で何やらリフトらしきものが動いている。前面には急ピッチで壁積み作業を進めるスタッフの姿が。
14. THE LAST FEW BRICKS
初めてブートでこの曲を聴いた時は、壁積み作業が間に合わないので苦し紛れにアドリブで引っ張った曲かと思ってました。
壁に隠れているのか、ギターはスノーウィー・ホワイトだけでギルモアの姿は見えない。
曲の終りには、壁はレンガをいくつか残しただけで完全に出来上がり、そのいくつかのレンガのすきまからかろうじてロジャーの姿だけが見える。
15. GOODBYE CRUEL WORLD
レンガ一個分の間から顔だけ出して歌うロジャーに全観客の視線が集中する。
前半最後の曲で「GOODBYE・・・」と歌い終わったところでたったひとつ残っていた隙間に最後のレンガが入り壁が完成。
本映像ではこの時の瞬間がどうもうまくとらえられていない。ナッソーのように客席の照明がついて、出来上がった壁を見ながら歓声を上げる観客の映像も欲しかったところである。
【休憩】
これまでにいくつかフロイドのブートDVDを買ったことがあるが、ハードとソフトの相性関係(?)と思われる動作の不具合が生じうまく再生できないものがあった。今回もこれを1番おそれていたのだが本映像ではそのようなこともなく正常に動作しているので、まずは一安心でありました。
【DISC 2】
1. HEY YOU
本映像では後半もいきなり曲が始まる。
完成した壁の前に置かれた椅子に、上を向いて口をあけたピンクの人形が座っており、それにスポット・ライトが当たっているが吊り人形のように動くことはしない。壁の上には円形スクリーンが半分ほど見え、そのライトは壁の内側を照らしている。もちろん、アーティストの姿は誰1人も見えない。
この時、観客は何を、どこを見ていたのであろうか?
2. IS THERE ANYBODY OUT THERE ?
曲が始まっても照明がつかず真っ暗なまんま。
しばらくしてレンガがふたつほど外れ、アコースティック・ギターを弾くギルモアの姿が現れるがとくに歓声はあがらない。
一応、これはギルモア本人である、というのが確認できるだけでも画質は良いほうであるということが言えようか。いや、マジで。
3. NOBODY HOME
壁になんだかよくわからない映像が映し出され、レンガがいくつか外れそこから前に張り出した台の上で、ロジャーが椅子に座り歌っている姿が現れる。
相変わらず最小限の照明で、ステージ全体が暗い。後半もロジャーは1のTシャツのまんまのようである。
4. VERA
銃弾の音にのって何やら壁に映像が映し出されるが小さくて何かわからない。もしかしたら外れた壁の上にテレビが置いてあるのかも。
ロジャーは前曲と同じ体勢で歌い続けるが、壁全面にいろんなスライドのようなものが映し出されたころ、いつの間にかいなくなってしまう。
5. BRING THE BOYS BACK HOME
バンドはどこで演奏しているのか、また誰が演奏しているのか、ロジャーはどこで歌っているのか、わからないままに観客はただ壁に映し出される映像を見続ける。
6. COMFORTABLY NUMB
やっとロジャーが白衣を着た医者の恰好で壁の前に出てくる。
応答形式で壁の最上段に立つギルモアと歌うこの曲、この場面は何度見ても感動してしまう。
ギルモアは白いシャツに黒いズボン。ギターも黒で照明も白1本なので途中一瞬白黒映像になってしまったのか?と思う。
後半、ただひとりライトを浴び壁の上でギターを弾くギルモアの姿はきっと美しく神々しかったに違いない。ああ・・・想像して書いているだけでも涙が出てしまう・・・・・
7. THE SHOW MUST GO ON
壁の上に見える円形スクリーンの照明がついてるだけで何も見えない。
8. MC:ATMOS
長いマイク・コードを引きずりながら再び Gary Yudman が登場。間延びした口調で二度目の前説を行う。
ナッソーではよくわからなかったが、そのままホラー映画に出られそうなすごいメーキャップをしている。うしろを振り向き、「まだ用意ができてないようですな」というようなしぐさをするところがなんとなく面白い。
9. IN THE FLESH
前説をさえぎるように曲が始まる。
4人の男性バック・コーラスと、それぞれ1人づつのサポート・メンバーを従えた総勢12人が壁前面のステージ上にいる。
ロジャーは黒い皮の軍服のコートのようなもの、ギルモアはやはり黒い半そでで胸にハンマー・マークらしきワッペンをつけたものを着ており、2人とも実にカッコいい。ミーハーですまぬ。
それにしても、この曲をライブ映像付きで聴いていると、私にとってはここからがこのステージの最大のハイライトという気がして、かなり思い入れのある「COMFORTABLY NUMB」でさえそのためのオードブルにすぎないという感じがしてくる。
このあたりはけっこう照明もつき、わりと明るい画面でメンバーの表情などもよくわかり、見ているほうも「おーし、いいぞいいぞ」と、このへんからがぜん興奮してしまう。
ちなみに、この曲でも最後に横っ腹にハンマー・マークをつけた巨大なブタが登場する。
余談ではありますが、よく『鬱』ツアー以降の「ONE OF THESE DAYS」にブタが出てくるのを「なんの意味もない」などと言う人がいるのだが、この時のブタにはどのような意味があったのであろうか? まあ、私はそのへんはあまり深く考えずに見たり聴いたりしているただのフロイド好きなので、なんでも出して楽しませてくれれば文句はないんですけどね。
10. RUN LIKE HELL
さて、「RUN LIKE HELL」である。
本映像には『8-9 AUGUST 1980』というサブ・タイトル(?)がついているが、本当にこの日の映像であるのかその曲前のMCに手がかりがあるとされている「RUN LIKE HELL」である。
で、そのMCをよく聴いてみると、どうやら本当に1980年8月9日らしい。タイトルを見ると2日分を1本にまとめたように思えるが、本映像の全体的な流れを見るとどうも全部9日の映像のような気がする。『THE WALL SHOW』は全公演収録されていると聞くのでやはりこれも一日分と見るのが自然なように思えるのだが・・・
ま、そのへんはいずれ誰かが明らかにしてくれると思うので続けて映像のほうを見ていきたい。
ナッソーでは、その画質ゆえよくわからなかったのだが、サポート・メンバーの4人がここでもお面をつけている。前曲からつけていたと思われるが、1曲目の「IN THE FLESH ?」以外は脱いでいたお面をなぜまたここで被る必要があったのだろうか? うーん・・・よくわからない・・・ということで、ここでは「あれって、後半でもお面つけてるんだよね」くらいのことにしておきたい。「わぁ〜、ずるいぞぉ〜」と言われてもわたしゃこれ以上のことは推察できないのですよ(悲)。すまぬ。
ま、それはさておくとして、気になるのはベースのサポート・メンバーである。いや、このサポート・メンバーがなぜここで、ロジャ−が前半着ていた1のTシャツを着ているのか?ということではなく、機械人形のように直立不動で指先しか動かさない人と、オープニングでお面をつけてカッコよくロジャーになりきっていた人は同じ人だろうか?というのが非常に気になるのである。
もしかしたら、メンバー4人、サポート・メンバー4人の他に別に影武者バンドと呼ばれている4人がいたのではないのか?と思いたくなってしまう。いや、ひょっとしたら、本当はフロイド自身が自らのお面をつけて演奏していたのかもしれない。フロイドならそのくらいのことはやりそうだ・・・なあ〜んてことは誰も言わないのでちと考えすぎですかねえ。
前にも書いたように、私はただ音と映像が楽しめればそれでいいので、あまりいろいろ考えて見たり聴いたりしないのだが、このへんだけは気になっちゃう。
しかし、『THE WALL SHOW』の映像というのは見るたびにいろんな発見がありますね。
それにしても、ギルモアのギター、年季入ってるなあ。
11. WAITING FOR THE WORMS
ナッソーでは、この曲の時にロジャーがドラに火をつけて叩くシーンがあり、歌っている時の姿も含めてここんとこはすごく気にいっていたのであるが、本映像には残念ながらドラは出てこない。
壁いっぱいに映し出されるハンマーの行進は実際に見たらすごい迫力だったことだろう。
昔、ナッソーのこの場面を見た知り合いの女の子は「怖い・・・」と言っておりましたよ。
12. STOP
映像、照明が消え、壁の最上段に座っているピンク人形にスポット・ライトが当たる。
13. THE TRIAL
ステージ上にメンバーの姿がなくなり、壁いっぱいにアニメーションのみが映し出される。この最後のハチャメチャっぽいアニメと曲、歌い方は大好きである。
壁の真ん中あたり一番下に人影のようのものが見え、スポット・ライトをあびるのだが、あれはなんだろう? ピンク人形だろうか? しかし・・・壁が崩れる時は上にいて落ちてくるんだよなあ・・・
最後、壁の崩壊シーンの映像はナッソーよりも迫力がある。ベルリンでは、壁の後ろでスタッフが手で押して壁を崩しているのが見えるのだが、やはりこういうのは見えないほうがいいですね。この時はどうやって崩していたのかな? ん?「メガロ・ステージ」に書いてあったかな??
14. OUTSIDE THE WALL
ステージ下手よりクラリネット(?)を吹くロジャーを先頭に、サポート・メンバーも含め各自かんたんな楽器を持ちながら現れ、崩れた壁の前で最後の曲を歌う。
歌い終わり上手に去って行くが、ハーメルンの笛吹きのようなロジャーのあとをみんながぞろぞろついて行くのが面白い。
最後に再びメンバー4人が現れ、挨拶をして幕を閉じる。リックはこの時すでにクビになっていたはずだが、ちゃんとこの中にいたというのがなんとなくうれしい。
【これは何回落としの映像か?】
ということで、ざっとではありますが『THE WALL SHOW』の今回初登場となったと思われるライブ映像について思ったこと、感じたことなどを書いてみた。
で、「結局、これのどこが良かったんだね?」などと言われると、私にはそれをうまく文章で説明する力がないので困るんですが、まあ、同じものを見てわかる人にだけわかっていただければよろしいかと・・・
ところで、1994年に初めて日本では一般的に出回ったと思われる『NASSAU '80』は、コレクターの間で取引されていたものの3回落としマスターを日本のブート業者が入手したものらしい。これをさらに業者がダビングして売っているので、我々が見られるものは4〜5回落としというわけになりますね。この「コレクターの間で取引されていた」ものが、そもそも何回落としたものか不明なので、最終的に日本で売られているものは何回落としなのかまったくわからないのでありますが、本物マスターからでは7〜8回はダビングを重ねたものではないかと思われる。いや、自信ないけどね。
『pulse』を8回くらいダビングすると、どのくらいの画質になるのかやってみれば大体わかるような気もするが、さすがにそこまではやっておりません。すまぬ。
そこで、本映像でありますが、ものがDVDだけにまったくわかりませぬ。これも最初はビデオ・テープだったと思うんだけど、私はいまだDVDレコーダーを所有していないので、ビデオ→DVD、DVD→DVDといったコピーでどのくらい画質が落ちるものなのか全然わからないのですね。デジタルだからほとんど画質は落ちないのであろうか?
それと、本映像を見て最初に「ん?」と思ったあの細かいモザイクのようなノイズ(?)は、ダビングを重ねて発生したものとは思えなかったので、わざと画質を落としたものではないのか?などと思ったのだが、DVDでダビングを重ねるとあのような画像になるのであろうか? う〜ん・・・謎はますます深まるばかりである。
一応、私としては「これはわざと画質を落としたものである」ということにしておきたいが、このへん詳しい方の意見が聞いてみたいものであります。
【あと6年?】
ま、いずれにしても、今回このような映像が見られることになったというのは非常にうれしいことでありまして、しばらくはこれで楽しめそうです。『THE WALL』リリース30周年記念には是非ともオフィシャル・ライブ映像のリリースを切に願うものであります。
2009年まであと6年。はたしてオレはそれまで生きていられるのか・・・?
2003,11,23
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