『ATLANTA 1987』は『光』を超えた!
久しぶりにオレが喜び転げまわるようなブート・ビデオ(DVD)が出た。
『PINK FLOYD ATLANTA 1987』がそれである。「Live at The Omni, Atlanta, Georgia, USA 3rd-5th November 1987 PRO-SHOT」という長ったらしいサブ・タイトルが付いた鬱ツアーでのライブ映像で、プロショットとなっている。つまり、観客が隠し撮りした「なんじゃこりゃ!?」というようなボロクソ映像ではないのである。これはもう注文するよりも早く胸がキュンとなってしまった。
鬱ツアーでのアトランタ公演というのは、元々ライブ・ビデオ用に撮影されていたらしいのだが、日本で陽の目を見たのはPV代わりに流された「現実との差異」だけであった(海外では他にも数曲流れたらしい)。このプロショットはいつかブートで出てくるのではないかと思っていたが、まったくそんな気配もなくとっくにあきらめていたのだが、20年もたって忘れたころになって出てくるとも思わなかった。それだけにこれはめちゃくちゃうれしい。
サブ・タイトルには「3rd-5th November」とあるが、どうもこれは11月5日のライブのようである。
なにはともあれ、曲順を追いながら見ていきたい。 ◇第1部◇ 01) クレージー・ダイアモンド なんの前振りもなくいきなり始まる。何はともあれまず画質だが、プロショットとはいえ、これはブートなのだ、ということを考えれば全然文句はないくらい良い。音質もいいほうだと思う。
演奏のほうはというと、イントロのシンセがなんかトーフ屋のラッパのようで「ありゃりゃ」だったがそれ以外はいい感じ。と思ったらリックさん、間違えてんじゃん。このころはまだリハビリ中だったのかな?
『光』では見ることができない円形スクリーンの、なんつうか投網をいくつもぶん投げたような映像というか、絵模様を見られたのがうれしい。
しかしまあ、『pulse』と比べるとえらく地味なステージだが、こんなんでも当時日本の音楽雑誌は「史上最大のショー」なんて紹介していたんだよなあ。
02) 生命の動向 最初の映像は、円形スクリーンに映されたものではなく、フィルム映像をそのまま画面いっぱいに映している。こういうのもめったに見られないので、これはこれでいいと思う。また、『光』ではカットされてしまった映像も見ることができる。
ライブ全体の映像の見せ方としては、『光』のように次から次へ画面が切り替わるような構成ではないので、このほうがかなり見やすい。
03) 幻の翼 最初のドラムのイントロ、いいですわねえ。「あのドラムの檻の中でぴょんぴょんはねてるやつなんやねん」などという人もたまにはいるが、オレはこのパーカッションはけっこう好きである。
サビのところでは、ギルモアが両手をちょっと広げて飛行機が飛ぶようなしぐさをするという、あまり見ることができないシーンも見られる。
支援歌手は左端に2人だが、レイチェルちゃんがまたまたいいですわねえ。とくにあの、腰を振りながら「ふん」てな感じでちらっとカメラ目線になるとこなんてたまらん。もっと映してほしいわあ(はあと)。
04) 空虚なスクリーン
05) 輪転
この曲はオレ的にはイマイチだが、これのまともなライブ映像というのはほとんどないので、参考程度になるだけでもちとうれしい。 06) ニュー・マシーン Part 1
08) ニュー・マシーン Part 2
この2曲はどうもよくわからん。CDでは次の曲へのつなぎ役という感じでさほど気にもならないが、ライブでは「やれやれ」という感じで一息ついてしまう。つーか、飛ばしてしまうかな。
これは真のフロイド・ファンじゃないとわかんないんだろうな。え、真のフロイド・ファンは『鬱』なんか聴かないって? あ、そうですか。。。
07) 末梢神経の凍結 こりゃ、なんか訳わからん邦題がいいですな。いや、曲もけっこう好きだったりする。これもまともな映像で見られたのはうれしい。
これを武道館で初めて見たときは、後半平べったいレーザー光線みたいのが出た時思わず「おおっ」と叫んでしまったよ。
09) 時のない世界 これはいい。つうか、この曲は大好きである。とくに後半のギターがいい。
鬱ツアーを名古屋まで見に行った時は、カセット・テープの両面に「幻の翼」「現実との差異」「時のない世界」の3曲だけを録音し、延々エンドレスで聴きながら東名高速を名古屋まで突っ走った、というくらい好きな曲である。
おっと、ここで支援歌手が突然5人になったぞ。いくらライブ・ビデオ用に撮影してるからといって5人は多すぎだべ。「3Pフロイドのライブはサポート・メンバーが多すぎてけしからん」という人たちにまた何言われるかわからんぞ〜。
10) 戦争の犬たち これは、昔見た海外Pサイトでワースト・ソングの1位になっていた曲で、オレもあまり好きではないのだが、ここでの演奏はなかなかいい出来で、映像付だと「お、これもなかなかいいべな」って思ってしまう。でも、サックスのスコット・ペイジ、ちとでしゃばりすぎ、目立ちすぎで1人だけ浮いちゃってるぞ〜。
あとこの曲では、ステージの両はじに1本ずつ赤い照明が煙突のように立っていて、左右に動くのがいい感じだったのだが、ここではそれが見当たらない。ビデオ用のライブだというのになんで消してしまったんだろう?
11) 現実との差異 待ってました! の1曲である。
当時は、フロイドがライブをやってるというのに、日本のテレビではその模様がなかなか放送されずにイライラしていたものだが、やっと見られたのがこの映像だった。(「幻の翼」のPVにも演奏シーンがちょっと出てくるが、これはリハーサル時のものであろう。それにしては照明が賑やかなので、もしかしたらPV用に撮影されたものかも)
この日の「現実との差異」は実に素晴らしい。とくに後半のギターは演奏、フレーズともに最高である。もうこの日のここだけはフロイドのベスト5に入れたくなっちゃうくらい大好きである。
歌が終わったあとのギルモアの「やったね!」という感じの握りこぶしがいいね。本人も「うん、今日はうまくいった」と思ったのだろうか?
映像も最高なので、只今リピートで鑑賞中。
◇第2部◇ 12) 吹けよ風呼べよ嵐 とくにインターバルもなくすぐにこの曲につながる。
しかし、イントロがちょいカットされているのが惜しい。あと、肝心なベースにちと迫力がない。ここはもっと派手に鳴らしてもらわんとねえ。後半大盛り上がりでのギルモアのスチール・ペダル(というのか?)もちとおかしい。
鬱ツアーでは、回を重ねるごとに照明の使い方が進歩していくのだが、とくにこの曲後半での円形スクリーン周りのバリライトの動きは、やっぱ『光』のころのほうが良くなってるわなあ。
この曲のベストはオレ的にはやはり武道館3・2バージョンである。
13) タイム 最初に時計のアニメが出てくるが、この曲に限らず本ビデオでは円形スクリーンの映像はそのまま画面いっぱいに映し出しているようである。
ま、それはそれでいいとして、さてこれも大好きな「タイム」である。しかし、これはまずイントロのタイコがイマイチ。なんつうかいつもとちと違う。それほど気になるわけでもないが、やっぱしちと違う。
あと、間奏のギターもちと違う。ビデオ用にちょいカッコつけたわけでもなかろうが、なんかへん。
この、ビデオ用に撮影されたアトランタ公演が結局ボツになったのは、もしかしたらこの「タイム」と「吹けよ風呼べよ嵐」の出来があまり良くなかったからではあるまいか、なあ〜んて思ってしまうような演奏なんだよなあ。って言ったら言い過ぎかなあ。
ま、ここは「言いたい放題」だかんね。もはやこんなところ見てる人もいないので、何書いてもいちゃもんつけてくるやつもいねえだろしな。
14) 走り回って 最後のベッドが飛んでくるのを見るたびに、これが日本公演で実現しなかったのが残念でならない。
これには「消防法に抵触する」とか「エレクトロニクス多用曲のため、日本では許可された電力使用量を超えてしまうため」とか諸説あるのだが、どれが本当なのかよくわからん。たぶん吊るしたベッドが観客の頭上を移動するのがダメなんだとは思うが・・・・・
今なら大丈夫という気もするが・・・(だからもう来ないって・・・泣)
それにしても、最初は舟など漕いでいたが、あのベッドの上の男は一体誰だ?
15) あなたがここにいてほしい 人気曲である。しかし、プロショットということで観客の声援も押さえ気味なのでよくわからないが、どうも鬱ツアーも序盤のころはまだ観客は合唱していないようである。
これもしみじみと聴くと本当にいい曲だが、ライブでは間奏でギルモアがスキャットのようなものを入れるのがオレはどうも気にいらない。これを止めるのは誰もいなかったのか?
16) アス・アンド・ゼム 他のメンバーがたんたんと演奏している中、やっぱスコット・ペイジだけ浮いてるなあ。やっぱ対ツアーではディック・パリーにしてよかったね。
このへんの曲はもうスタジオ盤に忠実な演奏で、「それじゃ面白くないでしょ」ってなりそうだが、オレはやっぱしそのほうが好きだったりするわけである。
いやまあ、次の曲は別ですが。。。
17) コムフォタブリー・ナム やっとここまで来た。といっても、ここまで来たらもうそろそろ終わりなんだよねえ。
イントロがイマイチ迫力に欠けるところがちと残念。この曲はもうイントロの入り方からしてこだわってしまうのである。『光』の時のような、この暑い夏に鳥肌が立ってしまうようなイントロでなくてはいけないのである。
でも、そのあとはもう最高〜。
演奏もいいが、後半ギター・ソロに突入した時、ニックのドラム・セットのうしろからあのミラーボールがするすると上がってくるところ、たまりませんなあ。もうこの一瞬をちゃんととらえているというだけで、このプロショットは『光』よりもえらいっ!!と断言してしまう。
『光』ではよくわからないが、あのミラーボールが開くところや、中にももう1個ミラーボールがあって、それは逆回転しているというのがわかるところまでよくぞ映してくれた。たかがミラーボールだが、武道館でこれ見た時はホント感動しちゃったもんなあ。
演奏は『光』(CDのほうね)のほうがいいが、「ナム」の映像ではこれが一番かな。うん、『pulse』よりもいいね。
◇アンコール◇ 18) ワン・スリップ 鬱ツアーでは、オープニングが「クレイジー・ダイアモンド」になってからはまったくセット・リストが変わらなかった。88年からは「虚空のスキャット」が追加されたが、オレはこれは日本公演で「オン・ザ・ラン」が出来なかったので代わりにこれをやったのかと思ったら、その前のオーストラリアでもやっていたんだなあ。
ということで、アンコールも変わらず1曲目は「ワン・スリップ」である。
「ナム」が終わったあとのギルモアのあいさつとか、アンコールを催促する手拍子とかもなく続けていきなり始まる。
演奏状態も良好で、この曲の時の支援歌手の動きも好き。支援歌手は曲により5人になったりするが、ここは2人。
しかしまあ、こういう「ワン・スリップ」みたいな曲はいいけど、フロイドの曲でリズムとかとるのって大変だろうなあ。まあ、くねくね踊りになってもしょうがないわなあ。
19) ラン・ライク・ヘル この「ヘル」は大好き。あのズンドコドラムが実にいい。ま、派手なコンサートだったので最後を締めくくるのにふさわしい曲で、最後まで楽しませてくれました、って感じかな。
でも、この曲もイントロ冒頭がカットされている。あの最初のとこ好きなんだけどなあ。
最後は、メンバーのあいさつも何もなく、曲が終わると同時にディスクも終わってしまう。
以上である。 「マネー」と「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール2」が収録されていないのは残念だが、それよりも惜しいのは「ようこそマシーンへ」もないことである。これのアニメ映像ちゃんと見たかったよなあ。
ということで、このプロショットは「吹けよ風呼べよ嵐」「タイム」の2曲以外は『光』よりもいいと言ってもいいくらいすばらしい出来である。これ、イントロなんかがちょいカットされてるとこちゃんとして、このまんまオフィシャルで出せばよかったんだよなあ。
ま、なんにしてもしばらくはこれで楽しめそうである。
2007,6,6
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