6.【ROGER WATERS IN BANGKOK】

 ここで自己批判をしておくと、私 申し訳ない事であるがロジャーのソロというのは「RADIO WAVES」と「AMUSED TO DEATH」しか持っておらず一番大事な「プロス」は友人から借りて聴いた事しかない。さらに「遊戯」すら聴き込んだとはお世辞にも言えないレベルでどちらかと言えばFLOYDのロジャーがメインのクチである。その程度の予備知識でこのコンサートに来ている時点でウラBBS失格なのであるが、そこは許して下され。

で、なんかメンバーは大体そろったかなーと思っているといきなり黒いTシャツの男が登場!
 これだ!ロジャーに違いない!!と思った途端にいきなり始まった、
 「IN THE FLESH」だ。出だしからいきなりギターのフレーズが違うぞ!やっぱり「So、Ya、Thought,Ya」はロジャーの声じゃないとダメだよなーと突然始まった感動の嵐にあおられまくる。でもちょっと声の端々に元気が無いのが気になりつつも「HAPPIEST〜」の「Yes、You!Stand still、Laddie!!」で一気に盛り上がる。もう完全にロジャーのペースだ。「う〜う〜う〜」の後に「あ”〜!!」が無かったのが気になったが次はお待ちかね「Part2」、オーディエンスが一斉に叫び始める。歌ってるのはロジャーじゃなさそうだが、やっぱこれだよな〜と聴きながらジーンとしていたらギターソロが始まった。前に座っていたファランのオヤジはこぶしを振り上げまくりだ。
 私も負けじとこぶしを振り上げまくる。ソロもかなりカッコよかったしギターの泣き具合がギルモアちっくで雰囲気満点だったが欲を言えばもう少し引っ張ってほしかった気もする。てな事でいきなりのめり込みまくりでロジャーのバンコクライブは始まった。

 「MOTHER」はちょっとここらで一休みと言う感じ。オーディエンスもようやく落ち着いたのか持ち込みチェックをくぐり抜けたカメラのフラッシュをパシャパシャ焚いている。ロジャーはあんまりフラッシュは気にしていないみたいで、かつてのロジャーとは別人のようだ。スクリーンには「壁」の前に例の「母親」の人形が浮かんでいる様子が映し出されている。このお母さんはいつ見ても不気味だ。「GET YOUR FILTHY HANDS〜」「SOUTHAMPTON DOCK」ではロジャーが歌ってるのに合せて前に座っているオヤジが歌っていた。こんなマイナーな曲を歌えるなんて凄いぜオヤジ。多分コンアンクリット(イギリス人)なんだろう、白い十字架がいっぱい写る場面が彼には感慨深いようだった。

 スクリーンにはあのバタシー発電所そして豚が浮かんでいる、と来れば次の曲は決まりだろう。
 「PIGS ON THE WING」が始まったので思わず奇声をあげてしまう。「We are ZIG ZAG the way・・」このフレーズはロジャーの声じゃないとなあ〜としみじみ聴き入った。そうこうしているうちに「チャンチャララ、チャラッ、チャラッ」が始まった(なんやねんそれ)。いやいや言わずと知れた「DOGS」だ、会場もいきなり大盛り上がり。ギターも原曲をかなり忠実に再現している、やっぱこの曲のギターは聴かすぜー。「Stone、stone・・」のリフレインが物足りん気がしていたら、あれれギターとベースが集まってカードなんか始めちゃった。その間シンセは頑張って演奏している、けどココもオリジナルに忠実なんだなあーココの部分こそ間延びする部分なんだからもうちょっとアレンジを利かせても良いのではないかと言う気がした。その後も完璧に原曲に忠実な演奏で「DOGS」を締めくくったのだが、やっぱり彼らは昔から「基本は原曲、ファンサービスにギターはアレンジ」なんだなー、とつくづく思わせる演奏だった。

 「DOGS」が終わって、さぁーダイアモンドだぞー、と気合を入れていたらなんか聴き慣れないつながり方。???と思っていたら何と!「太陽賛歌」が始まった。ちょっと待てよーひょっとしてダイアモンド1とマシーンとWISHとダイアモンド2スキップする積りじゃねーだろなー、そんなことしたらロケット砲ブチ込むどー(もうエエって)と、大きな不安が胸をかきむしる。おや、「太陽」にサックスとは?うぬナカナカかっこええじゃないか、なんやらギターも掻き鳴っておるぞ!むー21世紀のこの世に「太陽賛歌」をライブで聴こうとは予想だにせんかったワイ(セットリスト勉強しとけよ)。
 それもこんなアジなチューンで。スクリーンには海岸を走ったりしている若いFLOYDメンバーの写真が映し出されていて何だかジーンとしてくる。前に座っているファランのオヤジも大喜び。いやー、ヨカッタ良かった。

 と感慨にふけるのも束の間、「ふぁ〜〜〜」とあの「DIAMOND」のイントロが聴こえて来た。
 やったー!やっぱり演ってくれるのね!!ギターがかっちょエエ〜〜〜〜〜!!!最高〜。幸せ、来てヨカッタ〜〜。この最初のゆっくりしたテンポが余計にそういう幸福感を倍増させる。ここで、「このギターがギルモアだったら・・・」と思った人は日本でも多かったと思うが、私はFLOYDのメンバー(だった)がライブでこの曲を聞かせてくれただけで、もうそれだけで充分満足だ。おお〜サックスが始まった、88年の時はココでメチャメチャ感動したもんだったが、今回はのっけら感動の嵐だ。
 でももうちょっと上手だったら良かったけど・・・なんて思っているとスクリーンにはシドが大写し、こうも畳み掛けてこられるとググーっとこみ上げてくる物がある。そしていつの間にかすーーっと感動の「DIAMOND1」が終わっていってしまった。

 次は「MACHINE」だ、出だしの効果音がいろんな方向から聞こえてくる。スピーカーの後ろでも180度ステレオは少なくとも味わえると言う事だ。シンセの盛り上がりがちょっと期待より少なかったがお姉さんのボーカルがこの曲の悲壮感を和らげてくれているのは、これはこれでもいいなあという気がした。さてさてさて、この曲を演って次が「あの曲=WISH」でない訳が無いでしょう、それこそロケット砲ものだ。この曲はタイでも結構立上って歌っている人が多かったし、かくいう私も思いっきりアコースティックギターのロジャーと一緒になって歌っていた。お姉さんのコーラスが入って少々アレンジがしてあったが原曲の良さを損なうことなくしみじみといい曲だなあと改めて感じた。いやーいいですなあ、いつ聴いても、いつ歌っても。

 そうしていると、「デンロデンロデンロデンロ」と「2」が始まった。これまた最初の方はギターが聴かせる曲だが、これまた良いでんな〜。やっぱコレは座ってスライドギターで「ぎゅお〜んぎゅぎゅお〜ん」とやってくれてるというのが良いですなあ、なんてったって「DIAMOND」をライブで聞いてるんだから。言ってるシリからシンセもっとちゃんと弾けよーともギターももうちょっと頑張れよーとも思いつつもジーンとこみ上げてくる物を感じずにはいられない。スクリーンには赤い油と水がはじきあう訳の分からない映像がずーっと写っていて???と言う感じであった。最後はやっぱり「ほわわ〜〜ん」と終わってしまった。ああ、これで前半が終わってしまう〜。オーディエンスもかなりの盛り上がりで、みんな立上って全然歓声が止まない。気づいたら私もみんなと一緒に大声で叫んでいた。

 20分のインターミッションだ。よく見たら客席はほぼ満席状態、さすがタイ人ぎりぎりにしか来ない。
 さて、休憩だが、トイレに行ってビールを仕入れてタバコを吸ってなどど呑気にしてたら直ぐに済んでしまった。TUKTAが「あんたも好きねぇ」と呆れた表情で私の顔を見る。彼女にしてみたら聞いたことのない曲であんな訳の分からんスクリーン見せられてもつまらないだけなんだろうと思う。タイの若者はクラブ(アジアでは一般的にディスコテックと呼ぶ)でビシバシにビートの効いた曲で踊るのだ、ロジャーなんか苦痛で仕方がないことだろう。すまぬ、TUKTA。
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