8.【アンコール】

 と言う訳でステージ上のミュージシャンは全員引き上げていった。会場は「We want more!」のタイ語だか何だか良く分らない声がこだましている。まあロジャーの事だから当分出てこないだろう、この間にこの混乱に乗じてステージ脇から真ん中の方にごそごそと移動してやれ!と、人をかき分けカキ分けごそごそ動いていったら、おやま、こりゃ最前列のド真ん中ですなあ。俺も図々しいと言うかあつかましいと言うかしょうがない奴だなあと独りで反省しつつも脇の方に戻る積りは毛頭ない。
 ちょっとこれ以上はないんじゃない?というベスポジをゲットして後はアンコールが始まるのを待つのみだが当分始まらないんだろうなあと諦めていた。ら、そのうちミュージシャンがぞろぞろ出てきて、あれもうアンコール始まるの?と逆に拍子抜けだったが、待たされるよりは全然良い。なんかラッキー。

 最後くらいロジャーが登場して結構じらすのかと思っていたらえらくすんなりとアンコールが始まった。
 曲はもちろん「COMFORTABLY NUMB」、最近(といってもここ15年もの話だが)のFLOYD系のライブには無くてはならない曲だ。まあ、あともう一曲なくてはならない曲があるのだがその話はやめにしよう。さて、「NUMB」だがこの曲は皆さんがそうであるように私もギターのフレーズがたまらなく好きで、この曲を聴いているとしみじみFLOYDのファンで良かったと感じ入ってしまう。
オーディエンスはお姉さんに合わせて大合唱、というか曲みたいなものを叫んでいる。スゲエ。何しろ目の前にはロジャーがいて私の直ぐ前で歌っているのだ、何と言う幸せだろうか。「あ〜ああ〜」をロジャーと歌った瞬間には警備員を除けばステージ上の誰よりも、というか世界中で一番ロジャーの近くにいたのである!さてその様な感激の中で曲は進んでいく。おおーっギターソロが始まったぞ、かっちょエエ〜〜!!思いのほかゆっくりしたテンポでギターを弾いているがこういう「聴かす」感じの「NUMB」は初めてだ。ただもうヒト頑張りしてもらいたかったと言うか肝心な所の引っ張りが足りなかったと言うか、アンコールなんだからよーと言う気が少ししてちょっと残念だった。しかし感動の渦の中曲は終わりを迎える。オーディエンスも最前列にいるせいか大盛り上がりである。

 最後はかなり次の曲までじらした後に始まった最後の曲はセットリストでは「FLICKERING FLAME」だったのだが出だしは何とこうだった「Does anybody here remem−ber Vera Lynn?」いきなり「ヴェーラ・リン」を歌い始めたのだ!しょ、衝撃!!が
 最初のフレーズだけで歌うのを止めてしまい何だか色々としゃべり始めた。たのむー最後まで歌ってくれー、なんて叫んでいるのは私だけでその後「Thank you comming」と最後に言うと「FLI−CKERING FLAME」を演奏し始めた。ゆっくりとした優しい感じの曲でこの曲でライブを締めくくろうと言うのはある意味非常にロジャーらしいと言う気がした。最前列にいたのであまり分らなかったが前の方はライターはそこそこ点いていたようだった。もちろん私もライターを点す。周りではラリぱっぱのお兄ちゃんたちが訳の分からない事を叫んでいてうるさかったが、一秒でもロジャーのライブの最後の曲に集中したかったためずっとステージにそしてロジャーに魅入っていたのであった。そして私にとっては恐らく最初で最後であろうロジャーのソロライブは静かに幕を下ろしたのであった・・・・・・。
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